[CSS-06] 日本におけるポストコロナの畜産学関連の研究機関・大学
畜産に関連する研究領域は、家畜や家禽を含めた高等脊椎動物の基礎な生理・形態・遺伝・繁殖・生殖工学・栄養・飼養・管理・衛星から畜産経営、畜産物の利用や経済までの広範囲に及び、研究領域の学術交流、情報交換は非常に重要である。2020年3月に開催予定であった日本畜産学会第127回大会は(京都大会)は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」感染拡大防止の観点から急遽中止となり、さらに関連学会・国際会議等も相次いで中止され、研究成果の発表、学術交流、情報交換の機会が失われた。また、2020年4月に政府から緊急事態宣言が発出され、大学を含めた学校は休校となった。この宣言により、大学教員・研究者は出勤や出張が制限され、学生・院生にも大学構内への入講制限・移動制限等の要因により研究活動は低下した。さらに出入国にも制限がかかり、研究者の国際交流や留学生の修学活動にも大きく影響した。
大学での授業は、webを介した遠隔授業が実施され、大学および学生の通信環境や端末機のスペック等により、その質に大きな幅が生じ、その結果として提供される授業の質が問題となり、一部で混乱をきたした。遠隔授業でのオンデマンド方式等の工夫により、授業の時間的あるいは通学・移動等の要因に影響されることなく効率的 で効果的な授業が展開できたとの評価もある。しかし、実技等を含む実習や演習等では、適切な教材等の不足、学生に対する課題やレポート等の負担が大きくなる等の問題が指摘されている。さらに、新入学生に対しては遠隔授業では、学生同士の人間関係構築に課題があり、この観点から新入学生には不評となった。一方、一部の学生からは学費返還要求が上がり、また、アルバイト収入等の減少と相まって、学生支援の声が高まった。多くの大学で数万円から十万円程度の支援費が学生へ支給され、食料品無償配布等の支援も実施された。今後は従来の対面式授業と遠隔授業の得失を理解してハイブリッド形式で授業は展開されていくものと考えられる。このパンデミィックが、日本の高等教育機関における本質的な教育についての再考の契機となり、従来の高等教育から「修学者本位」の高等教育への根本的なパラダイムシフトが必要であろう。また、高等教育機関は、社会のためのであるべきことを明確になるように運営するべきである。そのための早急な改革・対応が求められている。国公立大学では、食料安全保障の観点から国家戦略あるいは地域活性化策として、体系的な畜産学教育を展開し、畜産を適切に展開できる人材育成が重要であろう。私立大学は日本の高等教育の多様性維持には大変重要である。そして、その畜産学・動物科学系では、多様な社会・受験生のニーズに対応し、かつ広範な畜産学・動物科学関連分野の社会的貢献を明確にした教育が展開されるべきである。このような対応ができない大学を含む高等教育機関は、近い将来、この分野からの退場を余儀無くされるであろう。
このパンデミックにより日本の社会情勢が大きく変化し、多大なる影響を受けた。そして日本社会の抱える潜在的な課題、すなわちパンデミィク発生前から存在する様々な課題が浮き彫りになり、より早急な対応が求められている。日本の畜産学に関連した研究および教育は、1)少子高齢化による急激な社会構造の変化への対応、2)さらなるグローバル化および人工知能・ロボットを含めたICT技術進展への対応および利活用、3)地球温暖化防止を含めた脱炭素化・環境保全への対策、4)持続可能で安定した安心安全な畜産物の生産システムの確立、5)地球規模での食料安全保障対策等の多様な課題に対応する必要がある。さらに、これらに対応する実利的研究や革新的解決策となりうるイノベーション創出を進めなければならない。そのために推進すべきICT高度化への環境整備、そして最も重要なのは、畜産学の体系的教育の提供とそれらを学んだ人材の輩出およびその教育・研究を担う高等教育機関の維持である。
大学での授業は、webを介した遠隔授業が実施され、大学および学生の通信環境や端末機のスペック等により、その質に大きな幅が生じ、その結果として提供される授業の質が問題となり、一部で混乱をきたした。遠隔授業でのオンデマンド方式等の工夫により、授業の時間的あるいは通学・移動等の要因に影響されることなく効率的 で効果的な授業が展開できたとの評価もある。しかし、実技等を含む実習や演習等では、適切な教材等の不足、学生に対する課題やレポート等の負担が大きくなる等の問題が指摘されている。さらに、新入学生に対しては遠隔授業では、学生同士の人間関係構築に課題があり、この観点から新入学生には不評となった。一方、一部の学生からは学費返還要求が上がり、また、アルバイト収入等の減少と相まって、学生支援の声が高まった。多くの大学で数万円から十万円程度の支援費が学生へ支給され、食料品無償配布等の支援も実施された。今後は従来の対面式授業と遠隔授業の得失を理解してハイブリッド形式で授業は展開されていくものと考えられる。このパンデミィックが、日本の高等教育機関における本質的な教育についての再考の契機となり、従来の高等教育から「修学者本位」の高等教育への根本的なパラダイムシフトが必要であろう。また、高等教育機関は、社会のためのであるべきことを明確になるように運営するべきである。そのための早急な改革・対応が求められている。国公立大学では、食料安全保障の観点から国家戦略あるいは地域活性化策として、体系的な畜産学教育を展開し、畜産を適切に展開できる人材育成が重要であろう。私立大学は日本の高等教育の多様性維持には大変重要である。そして、その畜産学・動物科学系では、多様な社会・受験生のニーズに対応し、かつ広範な畜産学・動物科学関連分野の社会的貢献を明確にした教育が展開されるべきである。このような対応ができない大学を含む高等教育機関は、近い将来、この分野からの退場を余儀無くされるであろう。
このパンデミックにより日本の社会情勢が大きく変化し、多大なる影響を受けた。そして日本社会の抱える潜在的な課題、すなわちパンデミィク発生前から存在する様々な課題が浮き彫りになり、より早急な対応が求められている。日本の畜産学に関連した研究および教育は、1)少子高齢化による急激な社会構造の変化への対応、2)さらなるグローバル化および人工知能・ロボットを含めたICT技術進展への対応および利活用、3)地球温暖化防止を含めた脱炭素化・環境保全への対策、4)持続可能で安定した安心安全な畜産物の生産システムの確立、5)地球規模での食料安全保障対策等の多様な課題に対応する必要がある。さらに、これらに対応する実利的研究や革新的解決策となりうるイノベーション創出を進めなければならない。そのために推進すべきICT高度化への環境整備、そして最も重要なのは、畜産学の体系的教育の提供とそれらを学んだ人材の輩出およびその教育・研究を担う高等教育機関の維持である。