日本畜産学会第129回大会

講演情報

口頭発表

3. 繁殖・生殖工学

繁殖・生殖工学

2021年9月15日(水) 09:00 〜 11:30 繁殖・生殖工学 (オンライン)

座長:松山 秀一、松本 浩道、杉村 智史(東京農工大学)、水島 秀成(北大院理学)

[III-15-12] 霊長類への応用を目指したトランスポゾン法を用いた長遺伝子導入条件の検討

*太田 光雄1、藤本 遼太郎1、耕作 比香留1、郡 七海1、富岡 郁夫1 (1. 信州大院総合理工)

神経変性疾患などの難治性疾患の克服には、遺伝子改変モデル霊長類の作出が必要である。霊長類で用いられているウィルスベクター法は、導入遺伝子長が約8kbまでと制限され、霊長類の受精卵は極めて貴重であるため、より高効率で低ダメージの長遺伝子導入法の開発が必要である。そこで本研究は、霊長類への応用を目指し、トランスポゾン法を用いた長遺伝子導入法を検討し、「囲卵腔注入エレクトロポレーション(PE)法」の開発を目的とした。 最初に、最適なトランスポゾン種を決定するため、SleepingBeauty (SB)、piggyBac (PB)、Tol2を用いて293細胞に遺伝子導入した結果、遺伝子導入効率はSBとPBは約21%、Tol2は13%であった。PBは長遺伝子の導入に適しているため、以後の実験ではPBを用いた。次に、トランスポゼースmRNAを用いた最適導入条件を検討した結果、導入遺伝子:トランスポゼースmRNAの比が1:2の時、有意に高い遺伝子導入効率を示した。最後に決定した条件を用いて、PE法と従来のマイクロインジェクション(MI)法で、マウス受精卵に遺伝子導入した。その結果、MI法の11.1%に比べ、PE法では23.1%と、2倍以上の遺伝子導入効率を示した。以上より、最適化されたトランスポゾン法とPE法を組み合わせることにより、高効率に(かつ低ダメージで)長遺伝子を導入できることが示された。