日本畜産学会第129回大会

講演情報

口頭発表

5. 畜産物利用

畜産物利用1

2021年9月15日(水) 08:50 〜 12:00 畜産物利用 (オンライン)

座長:水野谷 航(麻布大獣)、有原 圭三(北里大獣医)、小宮 佑介(北里大獣医)、下里 剛士(信州大)、荒川 健佑(岡山大院環境生命)

[V-15-10] 乳牛における放牧飼養条件下での栄養状態が乳中遊離脂肪酸に及ぼす影響

*朝隈 貞樹1、上田 靖子1、篠田 優香1、須藤 賢司1 (1. 農研機構北海道農業研究センター)

【目的】私たちは第128回大会において、放牧飼養において想定される「乳牛のTDN充足率が不足する飼養条件」、および牛乳の口当たりや風味に影響を及ぼすとされる「均質化条件」が、放牧牛乳の官能評価特性に影響を及ぼすことを明らかにした。本研究では、乳牛のTDN充足率が不足する放牧飼養条件において、風味に関与すると考えられる乳中遊離脂肪酸濃度にどのような影響を及ぼすか検討することを目的とした。
【方法】搾乳牛8頭を用いて1日二回搾乳、昼夜放牧により放牧試験を実施した。補助飼料としてグラスサイレージおよび濃厚飼料のTDN給与量を110%とする対照区と90%に制限した不足区の2区を設け、10日間の馴致期間後、4週間本試験を行った。分析サンプルは7日間毎に朝夕二回の個体乳サンプルを、乳量比により合乳したものを用いた。測定項目としては、一般乳成分、生乳中の脂肪酸および遊離脂肪酸を測定した。
【結果】全ての乳中遊離脂肪酸において、試験期間で有意な差が見られた。とくにC4:0-C16:0までの飽和脂肪酸は、有意な経時的減少が見られた。また交互作用は、C12:0、C14:0、C16:0について有意な差が確認され、いずれも対照区では試験期間を通して変化しないが、不足区では経時的な減少が認められた。放牧飼養により想定されるTDN充足率の低下は、乳中の脂質合成経路に何らかの影響を及ぼす可能性が示唆された。