第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

4 微生物の分子論

[ODP4A] a. ゲノム・プラスミド・遺伝子水平伝播・可動性遺伝因子・進化

[ODP-050] 比較ゲノム解析から見たHelicobacter cinaediの特徴

○富田 純子1,久綱 僚1,秋山 徹2,河村 好章1 (1愛知学院大・薬・微生物,2国立国際医療研究セ・病原微生物)

【背景】Helicobacter cinaediは微好気性環境で生育するグラム陰性ラセン菌であり,近年,分離報告が増加している注目すべき菌種である。本菌感染症は菌血症や蜂窩織炎等を呈し,除菌治療後完治したとみなされていた患者が再発する症例が多く報告されている。生体内防御機構および抗菌薬作用から回避した菌体が生体内に留まり続け,何らかの作用により再度増殖し再発を引き起こしていると予想されるが,生態や病原性は不明な点が多い菌種である。
【方法】H. cinaediおよびその近縁菌種のDNAを抽出し,Illumina MiSeqを用いてゲノム配列決定を行った。比較解析はRAST serverを使用し,H. cinaediのゲノム配列における特徴を探索した。
【結果】近縁菌種との比較ゲノムの結果,他のHelicobacter属菌種には存在していないH. cinaediに特有の複数の領域が見出された。そのひとつであるVapCは,tRNA切断に関わるtoxinであり,細菌の増殖制御やストレス応答への関与が示唆されている。また,走化性・運動性に関わる特有の遺伝子群も見出された。これらの菌種特異的な領域が,H. cinaediの高い再発性に関与しているのではないかと推測された。