第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

5 病原体と感染症(疫学を含む)

[ODP5A] a. 臨床微生物の分離・性状

[ODP-091] 臨床分離されたMRSAの性状と薬剤耐性及びバイオフィルム形成能に関する変化

○益田 菜々子1,若狭 成海1,三宅 悠太1,山田 陽一1,岡部 紀子1,平 順之2,和田 朋子2,杉山 哲大2,塩田 澄子1 (1就実大・薬・分子生物,2津山中央病院・薬)

【目的】メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は,院内感染の主要な原因菌の一つである。2011年から2018年にわたって,本学の連携病院である津山中央病院で臨床分離されたMRSAについて性状解析を行った。また臨床分離株の薬剤耐性とバイオフィルム形成能を調べ,解析した。
【方法】シカジーニアス分子疫学解析POTキットを用いて,菌株の分類を行った。POT法により院内感染型MRSA (HA-MRSA) と市中感染型MRSA (CA-MRSA) に分類した。抗菌薬に対する最小生育阻止濃度(MIC)を測定した。病原因子の1つであるバイオフィルム(BF)の形成量を測定した。
【結果・考察】2018年は2011年と比較してHA-MRSAの分離数が減少し,CA-MRSAの分離数が増加したことで,分離率はCA-MRSAの方が高くなった。同一のPOT型をもつ菌株が複数存在した。その内,全国的に報告されているPOT型106-9-2を示すCA-MRSAの分離数が多く,院内に定着していると考えられた。また,2018年に臨床分離されたCA-MRSAはPOT型の種類が増加していた。臨床分離株のクラリスロマイシンおよびレボフロキサシンへの感受性を調べた結果,HA-MRSAは両抗菌薬に耐性であり,変化はなかった。CA-MRSAは両抗菌薬に対する高度耐性株が増加していた。2018年に臨床分離された多くの菌株が標準株のN315より高いBF形成能を示した。これらの結果より,今までの感染対策では,CA-MRSAには十分な効果が得られないことが考えられた。これらの性状解析の結果を踏まえた新たな院内感染対策の構築が急務である。