第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

5 病原体と感染症(疫学を含む)

[ODP5D] d. 疫学・分子疫学

[ODP-106] 関東地区におけるMRSAの分子疫学解析

○加地 大樹1,2,佐々木 雅一3,大塚 喜人4,菊池 賢5 (1君津中央病院・臨床検査科,2東京医療保健大学大学院・医療保健学研究科,3東邦大学医療センター大森病院・臨床検査部,4亀田総合病院・臨床検査部,5東京女子医科大学・感染症科)

【目的】現在の関東地区におけるMRSAの分子疫学状況を明らかにする。
【方法】2018-2019年に関東地区13施設で血液および皮膚軟部組織検体から検出されたMRSA 164株につき,SCCmec, Toxin typing, spa typing, MLST, PCR-based ORF (POT) typing施行した。
【結果】164株のうち,SCCmec type IVに属するものが119株(73%)と大多数を占め,血液,皮膚軟部組織由来別でも,入院,外来別でもその内訳は変わらず,New York Japan cloneとしてこれまで主流を占めていたSCCmec II が僅か27株(17%)と激減していた。SCCmec type IVではST1−spa t1784とその近縁型が53株(45%)と大多数を占めており,このクローンは13施設中10施設から分離されており。現在のMRSAの主流なクローンとなっていた。SCCmec type II は従来のST5と遺伝背景の異なるST764に 大多数が置き換わっていた。pvl陽性株は9施設から28株(17%)と高頻度に認められ,その多くは皮膚軟部組織検体由来で,SCCmec type IV ST8-spa t008及びその近縁型が23株(82%)とほとんどを占めていた。
【考察】現在の関東地区におけるMRSAは入院外来を問わず,いわゆる市中感染型の新たなST1-spa t1784クローンが主流を占め,病院感染型の代表であったSCCmec type IIもST764クローンに変わっており,MRSAの分布状況に大きな変革が起こっていることが示された。(非会員研究協力者:荒井裕子,春日理恵子,後藤智彦,静野健一,為智之,松宮千将,柳原信恵,柚木華枝,吉田勝一,黒川正美,大柳忠智,荻原真二)