第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

5 病原体と感染症(疫学を含む)

[ODP5E] e. その他

[ODP-109] 卓上型電子顕微鏡(SEM)を用いた形態変化による薬剤耐性菌の新たな検出法の開発

○松本 絵里乃1,久田 明子1,平野 遼2,大南 祐介2,Jacques Bou Khalil3,今井 恭子2,入江 隆史2,揚村 寿英2,Didier Raoult3 (1日立・研開,2日立ハイテク,3Institut Hospitalo-Universitaire Méditerranée Infection)

【目的】微生物の薬剤耐性を起因とする感染症が問題となっており,起炎菌の候補抗菌薬に対する耐性の有無を迅速に検査し,効果的な抗菌薬を選択することが求められている。薬剤感受性検査の迅速化に向け,抗菌薬の影響によって生じる菌の形態変化に着目し,従来用いられている増殖のモニタリングよりも早く,菌の分裂前後の時間で検出することを目標とした。将来的な臨床への展開を見据えて,小型で簡便に利用でき高分解能な卓上型電子顕微鏡(SEM)を用いた新たな検査技術の開発を目指した。
【方法】単離培養細菌をモデル材料に用い,105 CFU/mLの細菌に対してEUCAST Clinical breakpoints-bacteria (v 10.0) のMIC breakpoint濃度の抗菌薬を15~30分間処理した後,その菌を卓上型SEMで観察し,菌の形態変化を評価した。
【結果】SEM画像において感性菌と耐性菌で抗菌薬投与の有無による菌の形態変化に違いが見られた。P. aeruginosaの感性菌は抗菌薬イミペネムの投与15分後には抗菌薬投与無しの菌と比較して形態に違いが見られた。一方耐性菌では抗菌薬投与の有無による形態の違いは見られなかった。他のグラム陰性桿菌やグラム陽性球菌などの感性菌についてもイミペネムやバンコマイシンなどの抗菌薬の投与30分以内には抗菌薬無しの菌と比較して形態に違いが見られた。
【結論】抗菌薬投与後の菌を卓上型SEMを用いて評価することで感受性/耐性を1時間以内に判定でき迅速に検査できる可能性を見出した。