第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

6 病原因子と生体防御

[ODP6D] d. 免疫回避機構・生体内増殖機構

[ODP-159] 膣粘膜面のインドールとIFN-γ量の増加はクラミジア感染の制御に関わる

○辻川 諒哉1,船橋 悠希1,大久保 寅彦1,タパ ジーワン2,山口 博之1 (1北大院・保科・病態解析,2北大・人獣リサーチセンター)

【背景】生殖器粘膜面でのChlamydia trachomatis (Ct) の生存性は細胞内トリプトファンの枯渇を起こすIFNγにより低下し,トリプトファンの前駆物質インドールが存在すると回復する。しかし実際の腟粘膜面のインドールとIFNγの量がCt感染率に与える影響は不明である。一方インドールは芳香族炭化水素受容体を刺激し,リンパ球が産生するIL-17を介して炎症応答を惹起する。本研究では,腟スワブ溶液中のインドールとIFNγを測定しCt感染率との関連性を精査し,Ct感染がリンパ球のサイトカインプロファイルに与える影響について検討した。さらにインドールがCt感染に与える影響も調査した。
【方法】札幌東豊病院で採取された腟スワブ検体(n=570)を用いた。インドール量はKovacs法で,IFNγ量はELISA法にて測定した(値は総タンパク量で補正)。CtはompAを標的にPCRで検出。またリンパ球系細胞JurkatにCt (L2 434/Bu) を感染させ,PCRアレイにてサイトカインプロファイルを非感染細胞と比較した。さらに上皮細胞株HEp-2にCt (L2 434/Bu) を感染させ,Jurkat存在・非存在下でインドールを添加し,Ctの生存性に与える影響を観察した。
【結果・考察】570検体中35検体がCt陽性であった。インドールとIFNγ量の間には正の相関がみられた(Pearson’s correlation r=0.874)。インドールとIFNγ量が増加するとCt感染率は有意に低下した(Welch’s t-test p<0.001)。またCt感染は,JurkatのIL-17AとCXCL8の発現を増強した。HEp-2細胞内のCtはインドールの影響は受けなかった。以上より,腟粘膜面にはインドールを介したCtの制御機構が存在する可能性が示唆された。