第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

7 抗菌性物質と薬剤耐性

[ODP7A] a. 抗菌性物質

[ODP-197] 高麗人参由来サポニンによる黄色ブドウ球菌の溶血毒素産生抑制の機序解明

○岩﨑 唯那1,岡 真優子1,寒川 慶一2,今宮 里沙1,南山 幸子1,岩尾 洋3 (1京都府大院・生命環境科・食環境安全性学,2大阪市大院・医・分子病態薬理,3四天王寺大・教育)

アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)は,かゆみを伴うアレルギー性の疾患である.これまでに我々は,高麗人参を皮ごと蒸し,乾燥させた紅蔘をメタノールで抽出したエキス(red ginseng extract; RGE)のサポニン成分がADマウスに抗アレルギー作用を示すことを報告した.近年,ADの悪化因子として,皮膚や鼻腔に常在する黄色ブドウ球菌が知られるようになった.本菌は,掻き破り行為によりバリア機能の低下した皮膚に感染し,皮膚炎を悪化させる.そのため,本菌を標的とした治療はADに有効であると考えられるが,多剤耐性菌の出現のため抗菌薬による治療は困難である.そこで本研究では,ADの寛解治療を目指し,黄色ブドウ球菌に対するRGEの有効性を検討した.0.1 mg/mL RGEは,3時間でBAA-1717株の溶血毒素遺伝子(hly, hlgA, hlgC, およびhlgB)発現を抑制した.さらに,24時間培養液のα-ヘモリジン量およびウマ脱繊維血液に対する溶血作用は,RGEの濃度依存的に抑制された.そこで,溶血毒素遺伝子の発現制御をおこなう二成分制御システム(SaeSRおよびAgrCA)へのRGEの作用を検討したところ,RGEは,saeSおよびsaeR mRNA発現を3時間で有意に抑制した.以上の結果より,RGEは黄色ブドウ球菌の溶血毒素の遺伝子発現を抑制して,皮膚炎の悪化を防ぐ可能性が示唆された.