第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

7 抗菌性物質と薬剤耐性

[ODP7C] c. その他

[ODP-224] 薬剤耐性Helicobacter pylori菌株の基準パネル

○林 俊治1,大崎 敬子1,竹内 啓晃1,横田 憲治1,横田 伸一1,林原 絵美子2 (1日本ヘリコバクター学会・耐性菌基準パネル作成部会,2国立感染症研究所・細菌第二部)

【背景と目的】胃粘膜疾患の治療および予防を目的にHelicobacter pyloriの除菌治療が広く行われている。しかし,多くの場合,薬剤感受性試験を行わずに抗菌薬が処方されるため,抗菌薬耐性菌が増加する危険性がある。その結果,除菌治療の成績の悪化が危惧される。しかし,H. pyloriの薬剤感受性測定法は国内標準法が確立しておらず,検査の精度管理も行われていない。この現状を解決するために,H. pyloriの薬剤感受性測定の標準化または正確性を保証するための薬剤耐性菌基準パネルを作製した。
【方法】全国の4施設から患者情報を切り離したH. pylori31株を収集した。これらの菌のクラリスロマイシ(CAM),アモキシシリン(AMPC),メトロニダゾール(MNZ)に対する最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。測定方法としてはEテストと寒天平板希釈法を用い,培地は異なる3種類を用いた。さらに,CAM耐性に関与する23S rDNAのアミノ酸変異,AMPC耐性に関与するPBP1Aの変異数を調べた。
【結果と考察】上記の31株中,CAM耐性株の全てにおいて23SrDNAのA2142GまたはA2143G変異が認められた。AMPC耐性の程度はPBP1Aの変異数と相関した。MNZの耐性については遺伝子変異との明確な関連は確認できなかった。以上の結果を基に,耐性菌基準パネルとして,JSHR6(感受性株),JSHR3(CAM耐性株),JSHR31(3薬剤耐性株)を選択した。
【結論】H. pyloriの除菌において,薬剤感受性試験の結果を基に抗菌薬を決定することが望まれる。