第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

8 微生物の応用

[ODP8C] c. その他

[ODP-236] アビエタン型ジテルペノイドによるバイオフィルム形成阻害効果

○中井 準也,根岸 慶輔,山本 宗市,篠原 顕太,西 竜汰,山田 陽一,工藤 季之,塩田 澄子 (就実大・薬・分子生物学)

【緒言】我々は,アビエタン型ジテルペノイド化合物であるアビエチン酸,およびその類縁体が院内感染の代表的起因菌であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA) N315株のバイオフィルム(BF)形成を阻害することを報告した。この報告をもとに,アビエチン酸系化合物を感染症予防に役立てる方法を検討している。
【方法】各菌株に対するRosin及びアビエチン酸(AA)類化合物の最少発育阻止濃度(MIC)を測定した。菌の生育を阻害しないと考えられるMICの1/8以下の濃度でBF形成量を測定した。また,MICの1/8濃度のRosin及びAA類化合物を用いて菌株の生育に与える影響を測定した。
【結果】Staphylococcus属の細菌に対するRosin及びAA類化合物のBF形成阻害効果を測定したところ,S. epidermidis ATC35984,S. haemolyticus NBRC109768,S. warneriNBRC109769に対し,濃度依存的にBF形成を阻害した。他のグラム陽性菌に対するBF形成阻害効果を測定したところ,E. faecalis ATCC51299,S. mutans 8148,S. sobrinus 100-4のBF形成を阻害した。菌の生育に与える影響を測定したところ,測定に用いた細菌ではAA類化合物における生育への影響はみられなかった.
【考察】AA類はBF形成阻害物質として有用であり,複数の細菌に対して抗菌活性に頼らない新たな院内感染対策の手法となる可能性が考えられた。