第94回日本細菌学会総会

講演情報

ワークショップ

[WS4] 選抜ワークショップ:微生物の分類・生理・構造・生態/微生物応用

2021年3月23日(火) 16:00 〜 18:00 チャンネル4

コンビーナー:関崎 勉(東京大学),長宗 秀明(徳島大学)

[WS4-3/ODP-233] 遺伝子トグルスイッチを利用した遺伝子発現履歴の可視化

○関本 美樹1,山本 尚輝1,河合 祐人1,木賀 大介2,常田 聡1 (1早大・先進理工・生命医科,2早大・先進理工・電気情報生命)

【背景・目的】クローナルな細胞集団において個々の細胞の表現型は大きくばらつくことが知られている。このように表現型がばらつくことは,変動する環境で生き残る生存戦略と考えられている。集団内で表現型がばらつく主な要因として,確率的かつ一過的な遺伝子の発現が報告されているが,一過性の遺伝子発現を検出する手法は十分に確立されていない。本研究では,表現型のばらつきにより集団の一部が抗菌薬抵抗性を持つpersisterに着目し,persister形成を誘導する遺伝子(rpoS, recA)の一過的な発現を検出することを目的とした。
【方法】本研究では,一過的な遺伝子発現の検出に遺伝子トグルスイッチの原理を応用した。すなわち,rpoSまたはrecAが一過的に発現した後に半永久的に蛍光を発現し続ける蛍光スイッチ株を構築し,遺伝子発現の履歴を可視化する。そこで,rpoSまたはrecAプロモーターの下流にtetRを組み込んだトリガープラスミドを作製し,スイッチ株に導入した。作製したスイッチ株の蛍光状態を1細菌ごとにフローサイトメトリーや蛍光顕微鏡で確認した。
【結果】蛍光スイッチ株を観察またフローサイトメトリーで解析した結果,一過性のインデューサー刺激(遺伝子発現)によって蛍光がONに切り替わることが確認され,その切り替えは遺伝子発現量に依存していた。一方で,遺伝子発現時間には強く依存せず,10分間程度の短い誘導刺激でも蛍光ONになる様子が観察された。さらに,rpoSまたはrecA遺伝子発現を誘導するストレス刺激が一過的に加わると,蛍光ONに切り替わった。したがって,本研究で作製した蛍光スイッチは一過的な遺伝子発現を可視化する方法として有用であることが示唆された。