第94回日本細菌学会総会

講演情報

若手研究者支援シンポジウム

[YRS3] 異分野融合研究の推進

2021年3月24日(水) 09:15 〜 11:45 チャンネル2

コンビーナー:玉井 栄治(松山大学),内山 淳平(麻布大学)

[YRS3-8] 黄色ブドウ球菌に対するファージ療法の研究開発:(II)クライオ電子顕微鏡によるファージの構造解析

○宮崎 直幸 (筑波大学生存ダイナミクス研究センター)

(II)クライオ電子顕微鏡によるファージの構造解析
低分子化合物の製剤化で分子構造が必要なように,治療用ファージを製剤化するためには,ファージ自身の構造を明らかにしなければならない。クライオ電子顕微鏡(クライオ電顕)は,近年急速に発展した技術で,タンパク質やウイルスの原子構造を決定する主要な方法の1つである。特に,バクテリオファージのような巨大な複合体の場合,結晶化が困難であり,クライオ電顕による構造解析が有効である。発表者は,クライオ電顕を使用して,分類学的に異なる2つの抗MRSA治療用ファージS13’とS6の構造解析を行っている。S13’はポドウイルス科,S6はミオウイルス科に属するファージである。
S13’は,直径約50 nmの頭部と長さ約40 nmの尾部から構成される比較的小型のファージである。我々は,その粒子を構成するほぼ全ての構成タンパク質の構造をクライオ電顕により原子レベルで決定することに成功した。そして,その構造から,感染に必要となる各種タンパク質が,ファージ粒子中で機能的に配置されている様子を明らかにした。一方,S6は直径約140 nmの頭部と長さ約300 nmの尾部から構成される最も巨大な黄色ブドウ球菌ファージである。S6は収縮する尾部を有しており,その収縮前後の鞘の構造を決定した。その収縮前後の鞘の構造を比較することにより,巨大な尾部の収縮機構を解明した。以上の研究成果より,S13’とS6は抗MRSA治療用ファージの構造モデルとなる。