第95回日本細菌学会総会

講演情報

学会企画 中・高校生研究発表セッション

[JRS] 中・高校生研究発表セッション

2022年3月29日(火) 14:30 〜 19:25 チャンネル3

コンビーナー:河村 好章(愛知学院大学),寺尾 豊(新潟大学),垣内 力(岡山大学)

[JRS-5] さかなの腸内細菌―抗菌物質を探る―

中崎 宏哉1,谷口 祐一2,長谷川 慎2,上野 智1 (1大阪明星学園明星高等学校,2長浜バイオ大学・大学院バイオサイエンス専攻)

本研究の研究目的は,魚の病原菌を不活性化させる物質を出す 「さかなの腸内細菌」を発見して,魚の病気を治す薬をつくり,養殖などに役立てることである.
これまでに,単離した2種類の細菌の種間関係を調べる独自の実験であるバクテリアバトルをおこない,キダイから単離したブレビバクテリウム属細菌とマダイから単離したシュードアルテロモナス属細菌の2種類の細菌が抗菌活性をもつ可能性が示唆されていた.本実験では,魚の病原菌で運動性のあるビブリオ属細菌に対する抗菌活性を調べるために,抗菌活性が示唆された2種の細菌をZoBell液体培地で培養した培養液を用いてディスク拡散法をおこなった.その結果,両者の培養液の上澄み液に抗菌物質が含まれる可能性が示唆された.共同研究をおこなっている長浜バイオ大学での抗菌活性試験の結果からも同じように,ブレビバクテリウム属細菌は,細胞外へ抗菌物質を出していることが示唆された.これらのことから,キダイの腸内から単離したブレビバクテリウム属細菌は抗菌物質を出すことが明らかとなった.ブレビバクテリウム属細菌が出す抗菌物質の構造解析に関しては,長浜バイオ大学との共同研究でおこなった.ブレビバクテリウム属細菌を遠心分離した上澄み液からシリカゲルカラムクロマトグラフィーで物質を精製し,NMR構造解析をおこなった結果,抗菌活性成分がN-アセチルチラミンであることが確認された.
以上の結果から,海産魚の腸内に生息するブレビバクテリウム属が抗菌物質を生産し,宿主の腸内細菌叢に影響を与えている可能性が考えられた.