第95回日本細菌学会総会

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オンデマンド口頭発表

[ODP1] 1. 分類・疫学・感染症-a. 系統解析・分類・タイピング

[ODP-003] 新興下痢症起因菌Escherichia albertiiの鞭毛H抗原遺伝子型の多様性と遺伝子型別法開発への応用

中江 広治1,大岡 唯祐1,村上 光一2,工藤 由起子3,藺牟田 直子1,後藤 恭宏4,小椋 義俊5,林 哲也4,岡本 康裕1,西 順一郎1 (1鹿児島大・医歯学,2感染研・危機管理研究センター,3国衛研・衛生微生物,4九州大・医・細菌学,5久留米大・医・感染)


【背景と目的】Escherichia albertiiは,Escherichia coliの近縁菌種として2003年に新たに命名された新興下痢感染症起因菌であり,集団感染を引き起こすこともある.近年,我々はO抗原コード領域の多様性を明らかにし,その多様性を基に疫学解析に有用な遺伝子型別法を開発したが,H抗原(fliC遺伝子にコード)の多様性は未解析のままである.本研究では,本菌におけるH抗原の多様性を解明し,迅速H抗原型別法を構築することを目的とした.
【方法】公共データベースに登録された243株のE. albertii株のゲノム配列を用いた.各ゲノム配列からfliC遺伝子配列を抽出し,既知のE. coliの53種のH抗原と比較した.また,fliC塩基配列の多様性を基に,PCRによる遺伝子型別法を開発し,種々の分離株を用いてその有用性を検討した.
【結果と考察】243株から計78種類のfliC遺伝子配列が同定され,既知のE. coliのH抗原型53種のfliC遺伝子との系統解析から,E. albertiifliC遺伝子はE. coliとは異なる系統に示すこと,また,E. albertiifliC遺伝子は大きく4タイプに分かれる(EAHg1-4)ことが明らかとなった.この多様性の低さは,本種が限られた自然宿主や環境に生息し,鞭毛が限られたライフサイクルで機能している可能性を示唆するものである.また,この4つのEAHg型の多様性を利用したmultiplex PCRによる遺伝子型別法を構築し,92株のトリ・ヒト由来株について評価した.その結果,全ての株がEAHg1-4のいずれかに型別され,本法が疫学解析に有用であることが示された.