第95回日本細菌学会総会

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オンデマンド口頭発表

[ODP7] 2. 生態-b. 細菌叢

[ODP-033] 乳幼児腸内フローラの再構成プロセスにおける代謝機能変動

今大路 治之1,豊田 敦2,高見 英人3,田中 彩4,下野 隆一4,桑原 知巳1 (1香川大・医・微生物,2国立遺伝研・生命情報研究センター,3東京大・大気海洋研究所・微生物,4香川大・医・小児外科)


【背景および目的】乳幼児期の腸内細菌叢は不安定であり,この時期の抗菌薬暴露は成長後の腸内細菌叢の成熟に大きな影響を与える.本研究では,抗菌薬投与を受けた乳幼児を対象として,抗菌薬投与前後の腸内細菌叢の菌叢組成解析や機能メタゲノム解析を縦断的に行い,抗菌薬暴露によって破綻した腸内細菌叢の回復プロセスに関与する代謝機能の同定を試みた.
【方法および結果】香川大学医学部附属病院に入院中の乳幼児から経時的に得た24便検体よりDNAを抽出し,次世代シークエンサーを用いて各サンプルあたりランダムに抽出した100万リードのメタゲノム配列データを取得した.KEGGに登録されている機能モジュールを利用した生理・代謝機能ポテンシャル評価法であるMAPLEを用いて抗菌薬暴露前後に変動する代謝機能を検索した.その結果,抗菌薬投与によって機能アバンダンスが消失する代謝モジュールや回復期に増加する代謝モジュールが複数同定された.特に回復期初期から回復期に増加する機能として,オリゴ糖輸送系,ポリアミンの合成と輸送,および抗菌ペプチド輸送に関与する機能が同定された.これらの代‍謝‍機能はBifidobacteriaceaeのみならずEnterobacteriaceae, Clostridiaceae, Enterococcaceaeに由来していることから,微生物間の共生的代謝ネットワークにより腸内フローラの再生が促されていると推察された.