[ODP-034] NASHモデルマウスにおける幼若期の抗菌薬暴露が腸内環境に及ぼす影響
【背景・目的】腸内菌叢の構成や代謝産物の変化と各種疾患のリスクの関連や生後早期の腸内環境の短期・長期の健康状態への影響が注目されている.私たちはこれまでに,高脂肪飼料の摂取により脂肪肝から非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を発症するモデルを用いて,出生直後から離乳期までの抗菌薬の暴露を行い,脂肪肝・脂肪肝炎の発症への影響を検討してきた.今回は,抗菌薬暴露群に肝障害マーカーの上昇を伴って早期に安楽死に至った個体がいたことに着目し,脂肪肝炎の悪化に関わる腸内菌叢・腸内環境の特徴を明らかにしたいと考えた.
【方法】 C57BL/6Jマウスに3週齢までの間,飲料水の代わりにアンピシリン他の抗菌薬水溶液を自由摂取させた.8週齢から28週齢の間はウェスタンダイエット(RD社のD12079B)を自由摂取させた.4,8,28週齢(または実験終了時)の自然排泄便を採取し,Terminal-RFLP法(長島法)による腸内菌叢の変化の解析とクラスター分析(Excel多変量解析)を行った.
【結果・考察】 4,8,28週齢のいずれの場合もアンピシリン暴露群の個体の菌叢は独立したクラスターを形成し,抗菌薬暴露なしの群と異なる傾向がみられ,アンピシリン暴露の腸内菌叢への影響が確認された.ウェスタンダイエットの摂取はどの群でも菌叢に影響を与えていたが,アンピシリン暴露群のうち早期に安楽死に至った個体とその他の個体との間ではD12079B摂取後のT-RFパターンに若干の相違がみられた.今後,グラム染色標本での菌量の比較,腸内菌由来の代謝産物の分析を行い,脂肪肝炎の悪化と腸内環境の関連を調査する予定である.