第95回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表

[ODP10] 3. 生理・構造-a. 代謝・生合成・メタボローム

[ODP-043/W3-4] アルブミンによるVBNC結核菌の再活性化機構

森重 雄太1,村瀬 良朗1,近松 絹代1,青野 昭男1,五十嵐 ゆり子1,大薄 麻未1,鎌田 啓佑1,山田 博之1,高木 明子1,御手洗 聡1,2 (1結核研・抗酸菌部,2長崎大・院・医歯薬総合・基礎抗酸菌症)


【背景・目的】VBNC(viable but non-culturable)状態とは,種々のストレスに抵抗性を示す休眠状態の一つである.休眠結核菌の再活性化機構には未だ不明な点が多い.我々は,VBNC結核菌の再活性化に培地中のアルブミンが作用することを見出した.本研究では,その作用機序の解明を試みたので,報告する.
【方法】Yewareらの電子伝達系阻害薬DPIを用いる方法1)を応用し,結核菌H37Rv株を VBNC状態へ誘導した.この菌集団を0.1%ウシ血清アルブミンを含むDubos培地に1/10量接種し,37°Cで20日間5% CO2培養し,7H10寒天培地におけるコロニー形性能(CFU/mL)を指標として再活性化能を調べた.また,細胞内のセカンドメッセンジャーであるcAMPの影響を調べるため,Adenylyl cyclase阻害薬SQ22536及びProtein kinase A阻害薬H89による阻害実験を行った.
【結果】再活性化初日のCFUは約102 CFU/mLであった.これはVBNC誘導前の全菌数の約0.01%に相当する.再活性化20日目には約107-8 CFU/mLに増加した.再活性化は30 μM H89によって阻害されたが,SQ22536は10 mMまで全く影響を及ぼさなかった.
【考察】DPI処理VBNC結核菌に対するアルブミンの再活性化機構は,Protein kinase Aによって制御される細胞壁生合成や分裂の再活性化に対してアルブミンが正に作用している可能性が示唆された.今後,アルブミンとProtein kinase Aの相互作用機序について検討する.
【参考文献】 1) Yeware et al. PLoS ONE 14(8) :e0220628 (2019)