[ODP-044] Cross-species conservation and generation of knockout mice of sulfurtransferase, Rhodanese
【目的】我々は,システインパースルフィドなどの超硫黄分子が,原核生物から真核生物に至るまで生体内で豊富に生成され,ミトコンドリアにおいて生成する超硫黄分子が電子伝達系を維持・促進する硫黄呼吸の存在を見出した.一方,好熱細菌Aquifex aeolicusにおいて,硫黄転移酵素ロダネーゼが単体硫黄(S8)を代謝して硫黄呼吸へ関与することが報告されているが,真核生物のロダネーゼの機能は,シアン化合物の解毒に関与することが知られているのみである.本研究では,ロダネーゼの種横断的な保存性と生理機能の解明に向けた解析を行った.
【方法・結果】シーケンスアラインメントの結果,活性中心システインを含めて,細菌からヒトに至るまでロダネーゼのアミノ酸配列は高度に保存されていた.組換えタンパク質を調製し,独自開発したPEGマレイミドを用いたゲルシフトアッセイ(PMSA)により,ロダネーゼが細菌(大腸菌)内でポリスルフィド化されていることが分かった.一方,高等生物においてロダネーゼは,メルカプトピルビン酸硫黄転移酵素(3-MST)とも高度にアミノ酸配列が保存されており,さらに,これらの遺伝子が,同一染色体上にプロモーターを共有し,head to headの形で隣接していることが分かっている.現在,ゲノム編集によりロダネーゼおよび3-MSTの単独および二重欠損マウスを作製し,その表現型を解析中である.
【結語】本研究において,ロダネーゼが細菌から哺乳類・ヒトまで種横断的に高度に保存されており,超硫黄分子・S8を介した硫黄呼吸の一端を明らかにした.今後の解析により,ロダネーゼの種横断的な保存性の意義と原核生物・真核生物における生理機能の解明が期待される.