[ODP-059] 海洋細菌Vibrio alginolyticusのシステイン走性応答機構とその制御
海洋細菌 Vibrio alginolyticus は,外環境に応じて極べん毛(Pof )と側べん毛 (Laf)を使い分ける.海水中では1本の Pof を用いて遊泳運動するのに対し,粘性の高い環境では菌の伸長と共に多数の Laf を生やし這うように進む.前者(swimmer cells),後者(swarmer cells)共に,共通のCheシステムによって走化性を示す.にもかかわらず,swimmer cells ではシステイン応答能が高いのに対し swarmer cells では低いことが見出された.この原因として,まず,走性受容体/トランスデューサー VaMLPs 存在量の差が考えられた.そこで,システイン受容体候補 VaMlp9 に着目して解析した.しかし,swarmer cells では VaMlp9 の量はむしろ増加しており,さらに過剰発現させても,システイン応答は増強されなかった.この結果は,システイン走性には他の因子が関与していることを示唆するものである.そこで,ゲノム配列解析から,ペリプラズムアミノ酸結合タンパク質の候補として,ABCトランスポーターの基質結合タンパク質 CtpA を見出した.その遺伝子 ctpA を欠失または過剰発現させると,システイン走性能が低下または増強された.このことから,CtpA は可溶性受容体として働くと示唆された.つぎに,CtpA 存在量を,抗 CtpA 抗体を用いた Western blotting により調べた.その結果,swimmer cells で多量の CtpA が検出されたのに対し,swarmer cells ではほとんど検出されなかった.以上の結果より,システイン走性には CtpA が可溶性受容体として関与しており,swarmer cells の応答能が低いのは,CtpA 合成が抑制される,または分解が促進されるためと結論された.