第95回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表

[ODP14] 3. 生理・構造-e. 分泌と輸送

[ODP-070] ペプチドグリカン合成に必須な脂質フリッパーゼのX線結晶構造解析

甲賀 栄貴1,田中 良樹1,吉海江 国仁1,谷口 勝英1,藤本 圭1,Lisa Fritz2,Tanja Schneider2,塚崎 智也1 (1奈良先端大,2ボン大学)


真正細菌の持つ細胞壁ペプチドグリカン(PG)は,溶菌への耐久性,細胞の形態を維持する役割を持つ.PGの合成経路には,Lipid IIと呼ばれる脂質結合型PG前駆体(undecaprenyl-diphosphate-MurNAc-pentapeptide-GlcNAc)をペリプラズム側に反転させる過程が必須である.近年,Lipid IIに対するフリッパーゼとしてMurJが同定された.さらにMurJは,輸送サイクルの一部を表すInward構造,Outward構造が報告され,InwardとOutwardを交互に繰り返すロッカースイッチモデルによって機能することが予測された.しかしながら,Lipid IIとの結合部位や反転させる際の駆動力といった分子メカニズムの詳細は未だ明らかにされていない.本研究では,基質Lipid IIを含む条件でのMurJの結晶化,X線結晶解析を行うことによって,より詳細な輸送メカニズムの解明を試みた.
真正細菌由来のMurJをNi-NTAアフィニティークロマトグラフィー,ゲルろ過カラムクロマトグラフィーなどを用いて精製し,Lipidic Cubic Phase(LCP)法を用いて結晶化に成功した.大型放射光施設SPring-8にてX線回折実験を行い,いくつかのMurJの構造を決定した.本発表では,今回決定した構造とこれまでのMurJの構造報告と比較し,MurJの分子機構を考察する.