[ODP-075] Analysis of the genome diversity of EHEC O157 clade 8 and their Stx2 phages using complete genomes
腸管病原性大腸菌(EHEC)O157:H7のclade 8は高病原性系統のO157:H7と考えられている.我々はclade 8の大規模ゲノム解析から,その集団構造やstx2サブタイプの分布パターンを明らかにし,Stx2産生レベルがStx2aファージのサブタイプと関連するという先行研究を支持する結果を得ている.しかし,Stx2aファージサブタイプのバリエーションなど,clade 8のゲノム多様性の実態解明にはドラフト配列の解析だけでは十分ではないことも明らかになってきた.本研究では,clade 8系統のゲノム多様性のより詳細な解析を目的として,clade 8内の各亜系統から計18株を選定してナノポア/イルミナリードのハイブリッドアセンブリにより完全長配列を決定し,これに完全長配列が公開されている17株を加えた35株の比較解析を行った.ゲノムサイズは5.4~5.7 Mbで,1~2種類のプラスミドが同定された.病原プラスミドは全株に存在したが,そのサイズには57~158 kbと顕著な多様性がみられた.プロファージ(PP)とintegrative element(IE)の網羅的な解析では,ほぼ全系統で保存されているもの(24種類)と菌株あるいは亜系統特異的なもの(11種類)が同定され,前者の大部分は配列がよく保存されていた.しかし,Stx2aファージの配列はバリエーションに富み,既知のファージサブタイプのバリアントが4種類同定された.その一つを保有する菌株は高いStx2産生量を示し,Stx2aファージのバリエーションと宿主菌のStx2産生量の関連が改めて示唆された.
謝辞:菌株を分与いただきました千葉県衛生研究所の横山先生と他の地方衛生研究所の諸先生方に感謝します.