第95回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表

[ODP17] 4. 遺伝・ゲノミクス・バイオテクノロジー-b. 遺伝子水平伝播・可動性遺伝因子・進化

[ODP-081] 最小増殖阻止濃度のタンパク質合成阻害系抗生物質と機械的刺激は大腸菌の細胞間形質転換を相乗的に促進する

早瀬 裕菜,笠垣 さゆり,前田 純夫 (奈良女大・院・食物栄養)


【目的】遺伝子水平伝播は,新型の病原菌や抗生物質耐性菌の発生に関わる重要な現象である.当研究室では,これまでに,2種の大腸菌株を,固相―気相バイオフィルム状態で混合培養することにより,細胞から細胞への非接合性プラスミドの水平伝播が形質転換機構で起こる現象(細胞間形質転換)を見出してきた[1-3].近年,最小増殖阻止濃度 [Sub-minimal inhibitory concentration (sub-MIC)] の抗生物質が,細胞増殖抑制ではない新たな生理作用を細菌細胞に及ぼすことが報告されつつある[4].一方,ある種の機械的刺激が形質転換を促進する作用も報告されている[5-6].そこで本研究ではsub-MICのタンパク質合成阻害系抗生物質とガラス球による機械的刺激が大腸菌の細胞間形質転換に与える影響を検証することを目的とした.
【方法】異なるプラスミドを保有する2種の大腸菌株を,sub-MIC抗生物質存在下で,固相―気相バイオフィルムとして混合培養後,ガラス球を転がす機械的刺激を与えた.その後,形質転換体を寒天培地上で選択した.
【結果】一部のタンパク質合成阻害系抗生物質と機械的刺激は,相乗的に細胞間形質転換を促進することを明らかにした.また,この効果はDNaseによって阻害されたことから,形質転換機構の関与を確認した.
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