[ODP-094] ボツリヌス菌のin vivo局在解析に向けた遺伝子改変技術の確立
ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)は,ボツリヌス神経毒素(BoNT)を産生し,ヒトを含む様々な動物に神経麻痺を引き起こすことによって致死をもたらす.ボツリヌス症のヒトにおける主な病型として,BoNTを経口摂取することで引き起こされる食餌性ボツリヌス症と,本菌芽胞を経口摂取することで引き起こされる腸管ボツリヌス症(乳児ボツリヌス症を含む)がある.腸管ボツリヌス症は芽胞が腸内で発芽増殖し,BoNTを産生することに起因するが,ボツリヌス菌の宿主における腸管定着機構は未だ明らかでない.本研究では,ボツリヌス菌の腸管定着の詳細を調べるツールを作製するために,ボツリヌス菌における異種タンパク質発現系を含めた遺伝子改変技術の確立を試み,具体的には蛍光タンパク質発現系を構築した.C. botulinumでのタンパク質発現に対してコドンを最適化したmCherry遺伝子を,大腸菌―クロストリジウム属菌シャトルベクターであるpMTL83353(Heap, et al.(2009)) Pfdxプロモーターの下流に組み込み,mCherryタンパク質発現プラスミドを作製した.これをボツリヌス菌62A株(Group I)にエレクトロポレーション(Bio-Rad Gene Pulser Xcell,0.4 cm cuvette,2.5 kV,25 μF,400 Ω,7.0 msec.)によって遺伝子導入し,mCherryタンパク質発現株を取得した.mCherryタンパク質発現量および観察条件の最適化(in vitro)およびマウス経口感染モデルを用いた腸管局在解析(in vivo)に関する結果を報告する.