[ODP-096] Improved hydrogen production from glycerol by metabolically engineered Clostridium perfringens
【目的】ウェルシュ菌は嫌気要求度の低い偏性嫌気性菌で,現在知られている細菌のなかで最も速い増殖速度を示す細菌の一種である.旺盛な有機物分解能を有し,生育に伴い大量の水素を産生する.我々の研究室では,ウェルシュ菌の各種代謝経路の改変による水素生産について研究を行ってきたが,今回,グリセロール代謝に関与すると考えられる遺伝子を欠失させ,その表現型を調べることで,グリセロール代謝経路の一端を明らかにし,本菌の水素生産量の向上を試みた.
【方法・結果】ウェルシュ菌13株をグリセロール含有培地で培養した結果,グルコース含有培地で培養した場合と比較して,到達菌体量及び水素産生量が大幅に低下し,培地中に1,3-propanediolの蓄積が認められた.ゲノム編集により,グリセロール代謝の解糖系流入経路の遺伝子(gdh-dhaK)を欠失させた結果,グリセロールを炭素源として用いて培養した場合の到達菌体濃度は親株の約50%に低下した.一方で,グルコースを炭素源として用いた場合は,親株と同等の生育を示した.次に,グリセロールから1,3-propanediolに代謝される初発反応酵素であるglycerol dehydrataseの遺伝子(pduCDE)を欠失させた結果,到達菌体量と水素産生量がグルコース含有培地で培養した場合と同程度まで改善した.これらの結果から,本菌のグリセロール代謝経路は,グリセロールからグリセロンを介して解糖系に流入させる経路と1,3-propanediol産生経路が主で,redox balanceの維持のためにそれらの経路がカップリングしていると推測された.