第95回日本細菌学会総会

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[ODP20] 4. 遺伝・ゲノミクス・バイオテクノロジー-e. その他

[ODP-098/W5-1] 大腸菌O157株がもつトキシン-アンチトキシン系ECs3274-ECs3275の解析

佐々木 優香1,吉岡 瑞貴1,茂木 優奈2,大塚 裕一1 (1埼大・理工・分子生物,2東大・新領域)


細菌がもつトキシン-アンチトキシン系(以下,TA)は,トキシンとアンチトキシンの2成分で構成され,プラスミド維持や薬剤耐性,ファージ防御に関わる.トキシンはDNA複製や翻訳,細胞分裂などを阻害して細菌自身の増殖を抑制する.一方,アンチトキシンはトキシンに結合してトキシンの毒性を抑制する.我々は大腸菌O157株のゲノムを対象にしてTA遺伝子の探索を行い,新規と予想されるTA遺伝子を複数発見した.本研究では,既知のトキシンにはないDNA結合ドメインhelix-turn-helix(HTH)をもつECs3275トキシンとそれと対をなすECs3274アンチトキシンについて調べた.
大腸菌K12株でECs3275を発現させると,増殖は停止して生存率が低下した.この増殖阻害にはHTHが必要であったことから,このトキシンはDNAを標的にしていることが示唆された.一方,ECs3275による増殖阻害はECs3274の発現により解消された.一般的なアンチトキシンと同様に,ECs3274はECs3275と結合し,さらに細胞内のECs3274はECs3275に比べて不安定であった.加えて,HTHをもつECs3274は自身のプロモーター配列の上流に結合して転写を抑制した.最後に,ECs3274-ECs3275が,予想に反して,O157株に感染するPP01ファージの効率良い増殖に必要であることが分かった.現在,ECs3275による増殖阻害機構,ECs3274による転写抑制機構,ECs3274-ECs3275によるファージ増殖の促進機構の解明を行っている.