第95回日本細菌学会総会

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オンデマンド口頭発表

[ODP22] 5. 病原性-b. 毒素・エフェクター・生理活性物質

[ODP-130] Streptococcus phocae由来β溶血因子の産生特性および作用特性

横畑 修人1,田端 厚之1,2,友安 俊文1,2,長宗 秀明1,2 (1徳島大院・創成科学研究科・生物資源学,2徳島大院・社会産業理工学・生物資源産業学)


【目的】Streptococcus phocaeは,アザラシから単離されたβ溶血性レンサ球菌である.ドラフトゲノム情報より,S. phocaeTはβ溶血因子としてコレステロール依存性細胞溶解毒素(CDC)とストレプトリジンS(SLS)のコード遺伝子の保有を確認した.そこで本研究では,S. phocaeT由来β溶血因子について,その作用特性や本菌の病原性との関連性の解明を目指す.
【方法】S. phocaeTが産生するβ溶血因子の作用特性は,様々な条件下で対数期培養上清を調製し,ヒトおよびウマ赤血球に対する溶血活性を指標として評価した.また,β溶血因子の遺伝子発現は,リアルタイムRT-PCR(rRT-PCR)を用いて解析した.
【結果・考察】S. phocaeT培養上清のウマ赤血球溶血活性はCDC活性を抑制するコレステロールで阻害されず,SLS活性を抑制するレシチンの添加で阻害されたことから,S. phocaeTのβ溶血性にはSLSが主として寄与すると考えられた.rRT-PCRの結果でも,十分な発現が確認されたSLSコード遺伝子に対し,CDCコード遺伝子の発現は僅かであった.また,培地中に血清成分を含む場合では,S. phocaeT培養上清の溶血活性の増強も確認された.
以上の結果から,S. phocaeが持つ2種のβ溶血因子のうち,SLSが主に細胞障害性に寄与し,その細胞障害性は血清成分存在下で増強されることが明らかとなった.この特性は本菌の病原性を検討する上で重要な知見と考えられた.現在,S. phocaeT由来のSLSコード遺伝子破壊株の構築など,更なる検討を進めている.