第95回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表

[ODP23] 5. 病原性-c. 細胞内侵入・細胞内寄生

[ODP-144] 消化管内共生Pathobiont Klebsiella pneumoniaeの上皮細胞標的化の開始起点

津川 仁1,鈴木 秀和2 (1東海大・医・生体防御学領域・Transkingdom Signaling Research Unit,2東海大・医・消化器内科学)


【目的】Klebsiella pneumoniaeは腸内共生菌であるが,加齢や免疫不全患者に肺炎や肝膿瘍などの疾患を引き起こす.消化管内に共生する本菌がどの様なタイミングで,どの様に病原性を発揮し始めるのか明らかではない.本研究は,K. pneumoniaeの病原性の発現開始点の解明を目的とする.
【方法】Klebsiella pneumoniae ATCC43816株を用いて,トランスメンブレンウェルを用いたCaco-2細胞とRAW細胞の共培養モデル,15週齢と57週齢のC57BL/6マウスを用いて,in vitroin vivo感染モデルを構築した.
【結果・考察】サイトカインアレイ解析により,K. pneumoniaeに応答したマクロファージがGas6を分泌することが明らかとなった.分泌されるGas6は上皮細胞を刺激しGas6-Axlシグナルを亢進させ,タイトジャンクションバリアを高めた.Axl阻害剤及び抗Gas6抗体を用いた解析から,Gas6-Axlシグナルによるタイトジャンクションバリアの亢進は,K. pneumoniaeの上皮細胞内侵入を阻害することが示された.老齢マウスでは,加齢に伴う腸管粘膜マクロファージの減少によりGas6分泌が亢進せずK. pneumoniaeの上皮細胞内侵入を容易に許し,感染したK. pneumoniaeは肝臓へ伝播した.
【結語】K. pneumoniaeに応答してマクロファージが分泌するGas6による腸管上皮細胞でのGas6-Axlシグナルが,K. pneumoniaeの生体内侵入を抑制し腸管管腔内に共生させ続けるために要求される.