第95回日本細菌学会総会

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オンデマンド口頭発表

[ODP23] 5. 病原性-c. 細胞内侵入・細胞内寄生

[ODP-145] Bacterial component analysis of Paraclostridium bifermentans subsp. muricolitidis

久綱 僚,富田 純子,河村 好章 (愛知学院大・薬・微生物)


我々は以前,デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性潰瘍性大腸炎(UC)モデルマウス糞便中に増加する特定細菌を見出し,分類学的精査によりParaclostridium bifermentans subsp. muricolitidis sp. nov. PAGU 1678Tを提案した.さらに,当該菌のモデルマウスへの経口投与によって,単独菌種によるマウス病態増悪能の証明に成功している.そして,PAGU 1678T株は類縁菌に比して細胞内侵入能が高いことが明らかとなり,細胞内では当該菌処理による炎症応答も確認された.一方で,PAGU 1678T株の死菌によってもわずかながら炎症応答が認められ,当該菌による一連の炎症活性には菌体成分の関与が予想されたことから,当該菌の全菌体タンパク質解析および全ゲノム解析を実施した.我々はそこから見出されたセレノメチオニン(SeMet)代謝能に着目した.UCを含む炎症性腸疾患患者の多くは,セレンを含む微量栄養素の吸収が不十分であることが知られている.さらに,セレン欠乏UCモデルマウスに対してSeMetを補充することで大腸炎重症度が軽減することが示されていることから,PAGU 1678T株とモデルマウス間でのSeMetの競合がマウス病態増悪の原因となっていることが示唆された.DSS処理した培養細胞およびモデルマウスへのSeMet補充によって,PAGU 1678T株処理下においても炎症軽減傾向がみられ,現在より詳細な解析を進めている.今後,遺伝子欠損株の構築などによってPAGU 1678T株のモデルマウス病態増悪メカニズムの解明を目標としている.