第95回日本細菌学会総会

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オンデマンド口頭発表

[ODP24] 5. 病原性-d. 免疫回避・生体内増殖

[ODP-154] 新興回帰熱ボレリア由来BOM1093はビトロネクチン結合により血清感受性ボレリア株を血清耐性化させる

佐藤 梢1,熊谷 由美2,林 哲也3,高野 愛4,大西 真1,川端 寛樹1 (1感染研・細菌第一,2順天堂大・医・生化学・生体システム医科学,3九大院・医・細菌学,4山口大・獣医・獣医疫学)


【背景と目的】ヒト血清感受性であるBorrelia garinii HT59Gに,新興回帰熱病原体Borrelia miyamotoiの外膜抗原遺伝子の一種bom1093を導入し得られたB. garinii HT59G pBOM1093株(以下,Bom1093株)は,ヒト血清に対して非感受性を示す.そこで本研究では,親株に血清耐性能を付与するBOM1093抗原の血清耐性化機構について解析を行った.
【方法と結果】我々はPull-down assay等により,BOM1093抗原がヒト血清中のVitronectin (Vn) と結合することを見出した.また,bom1093遺伝子を3’末端側より段階的に欠失させた変異体を作成し,Vnへの結合能を調べた結果,[1]BOM1093抗原のC末端のおよそ100アミノ酸残基がVnとの結合に重要であること,[2]この部分の欠失により,血清非感受性が消失することを明らかにした.またBom1093株は,Vnを特異的に枯渇させた血清に対して感受性を示すこと,ならびにVn枯渇血清に精製Vnを相補した血清では,Bom1093株の血清耐性が回復することを明らかにした.
【結語】bom1093遺伝子は回帰熱群ボレリアに特異的な遺伝子群の一つであり,これまでその機能は未知であった.本研究により,bom1093遺伝子産物であるBOM1093抗原はVnと結合し,補体系の膜侵襲性複合体形成を阻害する可能性が示唆された.Vnを介した病原体の宿主補体系回避機構は,新興回帰熱病原体では報告がなかったことから,ボレリア属細菌の自然免疫回避機構を理解する上で重要な発見となった.