[ODP-156] Pneumococcal triosephosphate isomerase binds to host plasminogen and promotes its activation
肺炎球菌は肺炎や中耳炎,副鼻腔炎などの非侵襲性疾患だけでなく,菌血症や敗血症,髄膜炎などの侵襲性疾患を引き起こす.はじめに,感染に関与する肺炎球菌のタンパク質を同定するため,肺炎球菌感染マウスの気管支肺胞洗浄液をプロテオーム解析した.その結果,肺炎球菌の全タンパク質の1%にも満たない15のタンパク質を同定した.これらは感染時に発現していることが示唆される.これらのうち,トリオースリン酸イソメラーゼ(TpiA)に着目し,感染に関与する機能を解析した.
組換えTpiAを作製し,Far-western blottingおよびBiacoreによって宿主分子との相互作用を解析すると,TpiAはヒトプラスミノーゲンに結合性を示した.プラスミノーゲンは,組織型およびウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子によってプラスミンに活性化されるが,TpiAはこの反応を添加量依存的に促進した.一方で,TpiAはプラスミンによって分解された.また,肺炎球菌の自己溶菌酵素オートリシンの遺伝子欠損株(ΔlytA)を用いて,培養上清に放出されるTpiA量を比較すると,ΔlytA株ではTpiA量が顕著に減少した.
肺炎球菌のTpiAは,本来は細胞内で機能する解糖系の酵素の一つである.しかし上述の結果から,自己溶菌によって多くのTpiAが細胞外に放出され,宿主のプラスミノーゲンと結合し,さらに,プラスミノーゲン活性化,すなわちプロテアーゼ活性を有するプラスミンへの変換を促進することが示唆された.肺炎球菌TpiAは,宿主プロテアーゼを菌体周囲に集積させ,宿主組織への侵入に利用することが推察される.