第95回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表

[ODP30] 7. 抗菌性物質・薬剤耐性-a. 抗菌性物質

[ODP-193] Serratia marcescensによる病原性細菌の生育抑制作用

三好 智博1,大堀 千郷1,武藤 悠2,石原 亨2,大崎 久美子2,吉田 明弘1 (1松本歯大・歯・微生物,2鳥取大・農)


常在菌は,口腔や腸など様々な部位で細菌叢を形成し,病原性微生物の増殖を抑制して発症を防ぐ役割がある.この細菌叢のバランスは抗生物質の服用などにより崩れ,細菌叢破綻(菌交代症)を引き起こす.本研究では,この問題を解決するために,全身疾患と密接に関連する歯周病に着目し,特定の病原性微生物にのみ作用する物質(微生物)を探すことを目的とした.歯周病の重症度は,歯周ポケットの深さによって測定される.近年,この歯周ポケットの深さとプラーク中に含まれるセラチア菌の量が逆相関していることが示された(1).我々は,セラチア菌が歯周の健康に関連する細菌であると予想し,セラチア菌(分離株)を用いて歯周病細菌であるPorphyromonas gingivalisに対する競合阻害実験を行なった.その結果,一部のSerratia marcescensによって,P. gingivalisの生育が強く阻害された.セラチ‍ア菌は,培養中に独特の香りがするため,揮発性物質に着目し,各‍種‍微生物の生育阻害実験を行なったところ,歯周病細菌であ‍る‍P. ‍gingivalis, Fusobacterium nucleatum, Aggregatibacter actinomycetemcomitansや,う蝕原性細菌Streptococcus mutansなどの生育が特異的に抑制された.現在,この揮発性成分を明らかにするためにGC-MS分析によって物質の同定を試みている.
(1)Meng Shi et al., Front. Cell infect. Microbiol., 8:124 (2018)