第95回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表

[ODP30] 7. 抗菌性物質・薬剤耐性-a. 抗菌性物質

[ODP-203] Mycobacteroides abscessusに相乗効果を示す抗菌薬の組み合わせの網羅的探索

北川 結惟1,篠原 基子1,佐々木 俊治2,土井 洋平1,2,港 雄介1 (1藤田医大・医・微生物,2藤田医大・医・感染症科)


非結核性抗酸菌 (NTM) 感染症は近年,先進諸国を中心に患者数が急増している.NTM感染症の中でも特に,迅速発育菌に分類される Mycobacteroides abscessusに起因するものは,治療薬の選択が困難であり,難治性を示す.M. abscessus感染症治療は,複数の抗菌薬を組み合わせた多剤併用療法である.このため,治療初期から高い効果を示す抗菌薬を組み合わせて用いることが出来れば完治の可能性も高まる.しかし,キードラッグであるクラリスロマイシン耐性を示した場合,有効性の高い抗菌薬の組み合わせを見出すのは非常に困難である. 本研究で我々は,M. abscessusに対する抗菌薬の併用効果をin vitroで評価した文献を網羅的に調査した.その結果,臨床で用いられている抗菌薬の組み合わせの中で,リファブチンークラリスロマイシンなど文献によって異なる併用効果を示した組み合わせや,そもそも併用効果が評価されていない組み合わせが多くあることが明らかとなった.そこで,実際の臨床現場で用いられている抗菌薬の組み合わせについて,in vitroでの併用効果を実験的に検証した.併用効果は,M. abscessus subsp. abscessusの標準株であるATCC 19977株とM. abscessus藤田医科大学病院臨床分離株,FUJIH0321株を用いて,checkerboard assay により評価した.本発表では,本研究で得られた知見に加え,臨床現場で用いられる薬剤の組み合わせの相乗効果の程度について触れながら,いかに高い効果を発揮する薬剤を選択しM. abscessus治療を進めるかについて議論させて頂く.
(謝辞)本研究は,AMEDの課題番号JP21fk0108128及び科研費20KK0216の支援を受けた.