第95回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表

[ODP31] 7. 抗菌性物質・薬剤耐性-b. 薬剤耐性

[ODP-206] Molecular characteristics of Klebsiella pneumoniae complex isolates causing bloodstream infections

高屋 明子1,2,山中 夏樹1,楠屋 陽子2,高橋 希3,中田 孝明3,高橋 弘喜2,石橋 正己1 (1千葉大・院薬・活性構造化学,2千葉大・真菌セ,3千葉大・院医・救急)


カルバペネム系薬は,腸内細菌科細菌の中でも基質特性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生株やプラスミド性AmpC β-ラクタマーゼ産生株などに起因する重篤感染症の治療薬として用いられる.本研究では敗血症患者でのカルバペネム感受性変化を調べるため,2018-2020年に患者血液から分離されたKlebsiella pneumoniae 50株の性状を解析した.カルバペネム系薬であるメロペネム(MEPM)の最小発育阻止濃度(MIC)を調べたところ,MIC 0.5-2 μg/mLと感受性が低下した株が8株存在した.これら8株をMEPM 5 μg/mLを含む培地で48時間培養し生存率を調べたところ,2株(2018-I1193,2018-I1386)で培養開始時と同等の生菌数が検出され,1株(2018-I1495)では10%生存していた.それ以外の株は,0.001%よりも低い生存率であった.MEPM存在下で高い生存率を示した3株について48時間後の培養液中のMEPM活性を調べた結果,2018-I1193,2018-I1386培養液のMEPM活性は消失していたが,2018-I1495培養では開始直後と同等の活性であった.ゲノム解析の結果,2018-I1193,2018-I1386は,AmpC β-ラクタマーゼであるDHA-1をコードするプラスミドをもつK. quasipneumoniaeであった.DHA-1を保有する大腸菌をMEPM含有培地で培養した際にもMEPM活性が低下し,高い生存率を示したことから,DHA-1によりカルバペネム系薬に低感受性を示すことが示唆された.一方,2018-I1495はK. variicolaであったが,ESBLやプラスミド性AmpC β-ラクタマーゼは保有していなかった.現在,2018-I1495のMEPM低感受性化の要因となる遺伝子について検討している.