[ODP-218] VanD型バンコマイシン耐性Enterococcus faecalisの分子疫学的解析
【目的】バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)は院内感染の原因となる代表的な薬剤耐性菌であり,複数の遺伝子型が知られている.その中でVanD型VREは世界的にも報告が極めて少なく,E. faecalisに関しての報告はほとんど無い.我々は国内で臨床分離されたVanD型VRE(E. faecalis)4株の分子疫学的解析を行った.
【方法・結果】 2012~2018年に北九州地域の3病院からSVR2085(A病院・尿),SVR2281 (B病院・尿),SVR2330(B病院・尿),およびSVR2331 (C病院・便)の4株のVanD型VRE(E. faecalis)がそれぞれ独立に分離され,これらを解析した.これら4株は全てVANに対して高度耐性を示し,また多剤に耐性であった.MLST解析の結果,3株 (SVR2085, SVR2281, SVR2331)はST392,1株(SVR2330)はST4であった.PFGEのパターンはST型と同様に分類された.VanD ligaseの塩基配列は,ST392型の3株では既存のVanD5と一致していた.一方,ST4型の1株はこれまで報告されているVanD ligaseの分類と異なることから,新たにVanD7と名付けた.VanD 型 VAN 耐性遺伝子を保有するgenomic island全体の大きさは179-249kbであり,ST392型の3株のgenomic islandは互いに類似の構造を持ち,染色体のlysS内に挿入されていた.ST4型の1株は既報にみられないgenomic islandの構造で,染色体の挿入部位も他株とは異なっていた.
【考察】今回解析したVanD型VRE4株のうちSVR2330は他の3株とはST型が異なり,VanD ligaseの分類やgenomic islandの構造も大きく異なることから別の由来と考えられた.他の3株は同一の起源・由来が疑われ,北九州地域に同一起源を持つVanD型VRE (E. faecalis)が伝播・拡散している可能性が示された.