第95回日本細菌学会総会

講演情報

シンポジウム

[S10] シンポジウム10
多様な視点から視た真菌学研究とその未来

2022年3月31日(木) 16:00 〜 18:30 チャンネル2

コンビーナー:豊留 孝仁(帯広畜産大学),松本 靖彦(明治薬科大学)

共催:日本医真菌学会,日本微生物学連盟

[S10-3] 多糖の高感度検出技術開発と真菌研究への応用

山中 大輔 (東京薬科大・薬・免疫学)

真菌の細胞壁はマンナン,β-グルカン,キチンなどの多糖によって構成されている.ヒトの体内で合成されない多糖は,真菌感染症のバイオマーカーとしても利用される.また,細胞壁多糖の合成機構は抗真菌薬開発におけるターゲットとなる.さらに,宿主にとって異物となる多糖に対し,自然免疫および獲得免疫が誘導される.様々な側面を持つ多糖を正確に検出するためには,高い構造特異性と結合力を持った多糖結合分子が要求される.これまでにレクチン,色素,抗体などが利用されているが,さらに高い特異性と結合力を求め,糖質分解酵素の機能改変による糖鎖結合タンパク質の作製を試みた.はじめに,エンド型β-1,6-グルカナーゼ(Neg1)に変異を加え,新規β-1,6-グルカン認識タンパク質として利用できることを証明した.改変型Neg1はβ-1,6-グルカンへの高い結合力と構造特異性を示し,これを用いたELISAはβ-1,6-グルカンの高感度検出を実現した.また,多くのカンジダ菌が菌体外にβ-1,6-グルカンを放出すること,カンジダ感染マウスの血液中にβ-1,6-グルカンが存在することを証明し,真菌感染症の新たなバイオマーカーとしてのβ-1,6-グルカンの可能性を示した.今後,様々な多糖に対する検出技術開発を進め,抗真菌薬候補の作用メカニズムの解析,細胞壁多糖に対する宿主の免疫応答の解析,多糖の体内動態解析などに役立てたい.