第95回日本細菌学会総会

講演情報

シンポジウム

[S10] シンポジウム10
多様な視点から視た真菌学研究とその未来

2022年3月31日(木) 16:00 〜 18:30 チャンネル2

コンビーナー:豊留 孝仁(帯広畜産大学),松本 靖彦(明治薬科大学)

共催:日本医真菌学会,日本微生物学連盟

[S10-4] 高病原性クリプトコックス症に対する獲得免疫とワクチンの研究: 米国NIHへの留学を経験して

上野 圭吾,宮崎 義継 (感染研・真菌部)

クリプトコックス症は,健常人が罹患する真菌症のひとつである.本感染症の制御に必要な獲得免疫は十分に特定されておらず,臨床で利用可能なワクチンもない.これまでに我々は,高病原性クリプトコックス症の感染予後を有意に改善する2種類のワクチンを開発し,これらがCD4陽性肺常在性記憶型T細胞(lung TRM)を誘導して感染を制御することを明らかにした.第一世代のワクチンは,樹状細胞(DC)ワクチンである.これは,DCにCryptococcus gattii莢膜欠損株の熱処理死菌を貪食させ,それを養子移入する.DCワクチンは,Th17型のlung TRM(lung TRM17)を誘導し,感染後はlung TRM17の増殖に伴ってIL-17A依存的に好中球応答や肉芽腫形成を誘導する (Ueno et al., Mucosal Immunol, 2018: Med Mycol, 2019).第二世代ワクチンは,独自に作製した弱毒株をワクチン抗原とした,細胞移入を伴わない新規経鼻ワクチンである.このワクチンもlung TRMを誘導し,感染後は顆粒球及び肉芽腫形成を誘導する (Ueno et al., PLOS ONE, 2019 他).
一連の研究過程で,職場の休職制度を利用して米国NIAID(Kwon-Chung Lab)へ留学する機会を得た.この研究室には,当該領域を長年牽引してきた技術と資源があり,多くの日本人研究者が在籍していた歴史もある.職場や家族の理解,様々な巡り合わせがうまく調和して,この機会が得られたのは幸運であり感謝の念に堪えない.この留学を経て,現在は第三世代ワクチンの開発に着手しており,lung TRMsの機能解析も進めている.本発表では,日米それぞれの研究事情にも触れ,それぞれの研究で得られた最新の知見を共有したい.