[S10-5] Research about fungal infections from the point of view of physician
呼吸器内科領域の多くの急性感染症は,細菌,ウィルスによるものである.COVID-19を除いては,それらの多くの病原体に対する治療法はある程度確立しており,適切な診断・治療が行われれば,いわゆる癌や誤嚥性肺炎などの終末期の患者を除いては救命出来ることが多い.一方で,慢性感染症では,そう上手くはいかない.特に肺アスペルギルス症は,診断も難しく治療法も限られており,長期予後は治療法が進歩している進行肺癌にも劣る様になってきた.アスペルギルスは肺の空洞などの住み着きやすい場所に,菌球を作り,バイオフィルムで身を守りながら狡猾に宿主への攻撃のタイミングを見計らっている.大学院でのアスペルギルス症の研究の後,2年間一般診療に従事していたが,海外留学の機会が巡ってきた.そこで,アスペギルスの細胞壁の合成成分の一つであるガラクトサミノガラクタンの研究を行っているカナダのマギル大学のDr. Donald Sheppardの研究に興味を持ち,幸いにも留学を受け入れていただいた.2015年8月から2年間の留学中には,アスペルギルス,カンジダ,緑膿菌のバイオフィルムに関連する研究に従事させていただいた.研究自体は,決して順風満帆とはいかなかったが,帰国後も臨床と基礎をつなぐトランスレーショナル・リサーチを同教室と共同研究として継続し行っている.臨床医の場合,基礎留学に当てられる時間はきわめて限られておいるが,海外の教室の研究に対する考え方や文化の違いなどを得るものは非常に多く,現在の研究にもつなげることが出来ている.本シンポジウムでは,留学中の研究や生活の話題,留学後の真菌研究内容について紹介する.