第95回日本細菌学会総会

講演情報

シンポジウム

[S3] シンポジウム3
ゲノム解析が拓くファージ研究の新展開

2022年3月29日(火) 09:15 〜 11:45 チャンネル4

コンビーナー:常田 聡(早稲田大学),岩野 英知(酪農学園大学)

共催:日本ファージセラピー研究会

[S3-5] ゲノム解析を使った薬剤耐性菌の迅速なプロファイリング

今西 規 (東海大・医・分子生命科学)

われわれはNanopore技術を使ったDNAシークエンサーとゲノム配列データベース,配列解析ソフトを統合化し,16S rRNA遺伝子のほぼ全長をターゲットにしたゲノム解析を行うことにより,種レベルの解像度を持つ16Sメタゲノム解析を2時間以内に行うことができるシステムを開発した(Mitsuhashi 2017 Sci Rep).
この技術を基盤として,サンプルに含まれる細菌の組成に加えて,各細菌の薬剤耐性プロファイルを同時に決定するための新たなプロトコルを開発した(Ohno 2021 Sci Rep).このプロトコルでは,DNAに結合しPCRを阻害する色素であるpropidium monoazide(PMA)を使用する.抗菌薬で処理したサンプルおよび未処理のサンプルにPMAを反応させ,その上で16Sメタゲノム解析を行う.もしサンプル中に薬剤耐性菌が含まれていれば,抗菌薬を加えた場合に薬剤耐性菌のDNA配列がより多く検出されると期待される.検証のため,薬剤耐性菌を含む細菌の混合物に対して本プロトコルを適用したところ,抗菌薬を加えた場合は薬剤耐性菌に由来するDNA配列の割合が有意に上昇した.したがって,このプロトコルを使えば薬剤耐性菌を迅速にプロファイリングできる.
さらに,濃度が既知の古細菌Haloarcula japonicaのゲノムDNAを事前にサンプル中にスパイクインすることにより,塩基配列数から細菌ゲノムのコピー数を推定できる.この定量技術を組み合わせることで,より正確な細菌叢の解析が実現できると考えられる.
本講演では,応用例を示しつつ以上の技術を紹介したい.