第95回日本細菌学会総会

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学会企画セッション

[SS2] Phylum(門)の国際原核生物命名規約への組込みおよび42門の承認名の公表―関連する命名規約の変更情報等について―

2022年3月29日(火) 17:00 〜 17:30 チャンネル1

コンビーナー:菊池 賢(東京女子医科大学)

[SS2-1] Phylum(門)の国際原核生物命名規約への組込みおよび42門の承認名の公表ー関連する命名規約の変更情報等についてー

河村 好章 (愛知学院大学)

国際原核生物命名規約(ICNP)は,これまで分類階級として「亜種(subspecies)」から「綱(Class)」までをカバーしていた.従って綱より上位の「門(Phylum)」については,命名規約の範囲外であり,これまで通称名が使われてきた.しかしICNP-2008年改訂版が決定され,更にそれを基とし,さらなる改定案が議論される中で,「門(Phylum)」についても命名規約に含めることが決定された.このような決定の後,42の新しい「門(Phylum)」の有効な公表が2021年になされた (IJSEM, 71(10); 005056).
新しい門の名称は,基準属を基にして接尾語-otaを付けることと規定された.多くの門で新しい門の名は,現在の通称名とほぼ同じとなる(語尾は-otaに変更)が,一部基準属に倣っていない通称名については変更される.ヒト臨床分離株が多く含まれるFirmicutes門, Proteobacter門は,それぞれBacillota門, Pseudomonadota門へとその名称が大きく変わることとなった.
通常「門(Phylum)」という上位の分類群に関心を持つことは少ないが,“Domain Bacteria”に次ぐ,上位の分類階級であり,その変更は,公定書のみならず教科書,参考書等々にも大きく影響を及ぼすことになる.今後も,広く認知されている名称の保存や例外的な取扱いなどの新たな提案がなされる可能性があり,まだ議論は続くものと思われる.しかしながら,現時点に至るまでの経緯の紹介,さらに今回正式に決定したこと,有効に公表された名称について,細菌学研究者の皆様に知って頂く機会としたい.