第95回日本細菌学会総会

講演情報

ワークショップ

[W5] ワークショップ5
選抜ワークショップ2:遺伝,分類,疫学

2022年3月30日(水) 16:00 〜 18:00 チャンネル3

コンビーナー:小椋 義俊(久留米大学),松井 英則(北里大学)

[W5-2/ODP-001] 大腸菌O103:H2国内分離株とデータベース株を用いた高精度系統解析及び完全長配列決定株のゲノム構造比較

谷口 愛樹1,中村 佳司1,後藤 恭宏1,李 謙一2,大岡 唯祐3,小椋 義俊4,大西 真2,伊豫田 淳2,林 哲也1 (1九州大・医・細菌学,2感染研・細菌第一,3鹿児島大・医歯学・微生物,4久留米大・医・感染医学)

腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症は志賀毒素産生大腸菌株による感染症で,腹痛や水様性下痢,血便のほか,溶血性尿毒症症候群や脳症などの重症合併症を引き起こす.国内では,毎年3000事例が報告されており,その60%程度は血清型O157によるものである.EHECにはO157以外にも多様な血清型が存在し,2020年度の報告数ではO26,O103,O111の順となっている.本研究では,2007年から2018年に国内で分離されたEHEC O103:H2(O103,N = 103)を収集し,次世代シーケンサを用いてドラフトゲノムを取得した.当研究室で以前完全長配列を決定したO103株(12009株)を参照株として高精度系統解析を行った結果,O103には複数の亜系統が存在し,12009株はマイナーな亜系統に含まれていることが明らかとなった.さらに,公共データベースにて公開されている海外株を加えた大規模な系統解析を行い,この傾向が国内で特異的かどうかを解析したところ,国内分離株の系統解析結果と一致し,複数の亜系統からなる集団であることがわかった.そこで,比較的主要な2つの亜系統から国内分離株を1株ずつ選抜してナノポアロングリードシーケンスを行い,イルミナショートリードとのhybrid assemblyにより完全長配列を決定した.本演題では,高精度系統解析の結果とともに,当研究室で完全長配列を決定した3株と完全長配列が公開されている2株の詳細なゲノム構造比較の結果を報告する.
共同研究者:
森本洋,畠山敬,田中静佳,河合優子,北橋智子,青木順子,長岡宏美,古田敏彦,若林友騎,田辺純子,濱崎光宏,阿部有利,成松浩志(菌株を分与していただいた各地の地方衛生研究所)