第95回日本細菌学会総会

講演情報

ワークショップ

[W8] ワークショップ8
侵襲性酵母様真菌感染症に対する診断・治療法の開発

2022年3月31日(木) 13:05 〜 15:05 チャンネル2

コンビーナー:杉田 隆(明治薬科大学),田邊 公一(龍谷大学)

共催:日本医真菌学会

[W8-4] カンジダ属真菌の細胞表層多糖の解析

浦井 誠 (東京農大・生命科学・分子生命化学)

高度先進医療の急速な発展にともない,真菌症の易感染患者が増加している.このうち発症件数の多いカンジダ症はCandida albicansによるものが主であるが,近年,non-albicans Candidaによるカンジダ症が増加してきている.これらは菌種により抗真菌薬感受性が異なることから,迅速かつ的確な原因菌の同定が必要であるが,有用な検査法はいまだ乏しい.特に米国でも注意喚起されたC. aurisは多剤耐性を示すなど問題となっていることから,高精度かつ簡便な新規迅速検査法の開発が望まれている.カンジダ症の迅速検査法としては,C. albicansの細胞表層多糖であるマンナンに対する抗体を利用した血清診断法の開発が試みられているが,感度の低さや菌種間での反応性の違いから臨床応用されていない.真菌の細胞表層は菌種により異なる多糖で覆われており,これらの化学構造の違いが宿主免疫からの回避や,抗真菌薬耐性,接着などに関与することが示唆されている.また,これら化学構造の違いを明らかにすることで,迅速な菌種同定法の開発に繋がると考えられるが,C. aurisのように未だ細胞表層多糖の性状が明らかでない菌種も存在する.一方,これまでの真菌細胞表層多糖に関する研究報告では,実験室的に一般的な培養条件で生育させた菌体を用いたものが多く,宿主感染時の生育環境とは大きく乖離しており,実際の感染時における多糖構造とは異なる可能性が考えられる.そこで本研究では,実際に臨床応用可能な迅速診断法の開発を目指して,感染状態を考慮した培養条件で生育した菌体の細胞表層多糖についても構造解析を試み,臨床上問題となっている代表的な菌種間で比較をおこなった.