第95回日本細菌学会総会

講演情報

ワークショップ

[W9] ワークショップ9
選抜ワークショップ4:病原性(細胞内侵入/増殖/寄生・免疫回避),生体防御

2022年3月31日(木) 13:05 〜 15:05 チャンネル3

コンビーナー:東 秀明(北海道大学),土門 久哲(新潟大学)

[W9-1/ODP-189] GBP1はTBK1のリン酸化を介してA群レンサ球菌に対する選択的オートファジーを制御する

曵地 京,野澤 孝志,中川 一路 (京都大・医・微生物感染症学)

Group A Streptococcus(GAS)は,ヒトを宿主とするグラム陽性細菌である.GASが非貪食細胞へ侵入すると,選択的オートファジーが誘導され菌が分解される.ここでTBK1(Tank-Binding Kinase 1)のリン酸化が重要となるが,GAS感染時のリン酸化機構はいまだ解明されていない.本研究において我々は,TBK1リン酸化の新規制御因子としてGBP(Guanylate Binding Protein)ファミリータンパク質に着目した.GBPは抗病原体分子として機能するGTPaseであり,病原性細菌の分解・排除に関与する例が複数報告されている.しかしTBK1リン酸化への関与は不明であり,GASを初めとするグラム陽性細菌に対する選択的オートファジーへの関与も報告が少なく検証が必要であった. まず,HeLa細胞へGASを感染させた際のGBPの局在を観察したところ,GASを含有するオートファゴソームにGBP1・2・4が局在した.この中でも特に局在率の高かったGBP1についてノックアウト(KO)細胞を作成したところオートフォゴソーム形成率が有意に減少し,GBP1がGASに対するオートファジーへ関与することが示唆された.次に感染時のTBK1に着目したところ,リン酸化がGBP1 KO細胞で減弱するとともに,GBP1との相互作用が共免疫沈降によって検出された.さらにリン酸化TBK1によってGASへの局在が促進されるオートファジー誘導分子p62に関しても,GBP1 KO細胞では局在が減少した.最後にGBP1の制御因子に関して検証したところ,GASが引き起こした宿主膜損傷を認識する分子,Galectin-3依存的に菌体へ局在した.これらの結果から,GBP1はGAS感染時に膜損傷の認識を介してTBK1のリン酸化を制御しGcAVの形成に寄与することが示唆された.