第95回日本細菌学会総会

講演情報

学会企画 細菌学若手コロッセウム

[WCB] 【共催】細菌学若手コロッセウム―未来を拓く若手細菌学研究―

2022年3月29日(火) 14:30 〜 19:30 チャンネル2

コンビーナー:宮腰 昌利(筑波大学),一色 理乃(早稲田大学),柴田 敏史(鳥取大学),佐藤 豊孝(北海道大学),福田 昭(酪農学園大学)

[WCB-2] Staphylococcus argenteusの国内の分布実態調査と分離菌株の性状解析

若林 友騎1,2,吉原 静恵3,徳本 勇人3,川津 健太郎1,三宅 眞実2 (1大安研・微生物,2大阪府大・生命環境科学,3大阪府大・理学)

Staphylococcus argenteusは2015年に新種として登録された新興の食中毒および感染症起因菌である.本菌はS. aureusの近縁菌であり,通常の生化学的性状試験ではS. aureusと区別することができないため,多くの場合S. aureusとして誤同定されていると考えられる.そのため,S. argenteusの正確な分布状況は日本を含む多くの国で明らかでない.そこで本研究では,S. argenteusの国内の分布実態調査を実施するとともに,分離された菌株の性状を解析した.
市販食品におけるS. argenteusの汚染実態を調査したところ,鶏肉の13.9%からS. argenteusが分離されたが,その他の食品からは分離されなかった.食鳥処理場での調査では,食鳥の羽や糞便からはS. argenteusが分離されなかったが,チラー水や施設器具の拭き取り検体,と体の拭き取り検体からS. argenteusが分離された.全ゲノム配列解析の結果,S. argenteusが食鳥処理場環境に定着しており,市販鶏肉の汚染源の1つとなっていることが示唆された.
また,調理従事者手指および調理器具の拭き取り検体から分離されたブドウ球菌株の再同定試験を実施したところ,その7.3%がS. argenteusであった.分離株の全ゲノム配列解析の結果,同一施設の調理従事者および調理器具由来株はほとんど同一のコアゲノムを有しており,ヒト手指を介して調理環境中での汚染が拡散していることが示唆された.