[WCB-4] 同一不和合性群に属するプラスミドの宿主域比較
プラスミドは接合伝達によって様々な遺伝子を運び,微生物の進化や環境への適応に寄与している.我々は,同一不和合性群(PromA)に属し,遺伝子構成は似ているにもかかわらず,GC含量が最大10%異なる4本のプラスミドを取得した.プラスミドのGC含量は,宿主細菌の染色体よりも5~10%程度低い[PMID: 30459733]という知見と照らし合わせると,得られた4本のPromAプラスミドは異なる宿主域を示すことが予想された.そこで上記プラスミドについて,環境試料由来の微生物群集を受容菌とした接合実験を行った.得られた計18科(466株)の接合完了体のうち,4本のプラスミドに共通したのは4科のみであった.従って,同一不和合性群に属しても,塩基組成の異なるプラスミドの宿主域は異なることが示された.また,接合完了体の染色体配列は,その他の細菌染色体と比べて,プラスミドとの連続塩基の出現頻度の類似度が高く,プラスミドと染色体の塩基組成の類似度から宿主域の予測が可能と考えられた.塩基組成に関するこのような傾向は,別のプラスミド群,IncP/P-1群でも同様に認められた.従来,IncP/P-1群は綱や門の異なる細菌を宿主にできる広宿主域プラスミド群とされてきた.しかし近年発見されたpDS1は,IncP/P-1群プラスミドと不和合性を示すが,Enterobacteriaceaeのみを宿主とした.pDS1と,従来の広宿主域型のIncP/P-1群プラスミドとの宿主域の違いをもたらす因子を解明できれば,上述した塩基組成による宿主域予測と組み合わせることで,より精度の高い予測が可能になると考えている.当日は,IncP/P-1群プラスミドの複製機構に着目し,宿主域の違いの原因の解明を試みた成果についても報告する.