第33回日本がん看護学会学術集会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム1
がん看護実践における倫理的課題と向き合う
~がん看護専門看護師の様々な実践場面から~

2019年2月23日(土) 10:00 〜 12:00 第3会場 (福岡国際会議場 メインホール)

座長:寺町 芳子(大分大学 医学部 教授),長谷川 久巳(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 看護部)

 がん医療においては、治療選択・決定の場面、治療中止や緩和ケア移行の場面、家族や医療者らとの意見対立、在宅療養での課題など様々な倫理的課題が生じます。がん看護実践における倫理的課題への介入では、『その人らしさ』を尊重した支援の充実は、重要な課題です。このような倫理的課題に対して、看護師は望ましい看護実践を行い、常に自己の価値観と向き合う姿勢が求められています。
 臨床の現場で看護師は、日々、忙しい中、寸暇の間をみつけては一生懸命患者さんに対峙しようと頑張っています。しかし、いざ患者や家族の意向を聞こうと思うと、患者・家族が死を意識するのではないか、何か聞かれたらどう答えていいのかわからないといった恐れなどで躊躇してしまう。そのため、患者・家族と共通理解していくような対話ができず、患者・家族の意思やその背景にある価値観などを捉えきれないもどかしさを感じることもあるのではないでしょうか。また、『その人らしさ』を尊重した支援においては、多様な価値観を認めながら合意形成していくことが重要ですが、患者・家族が納得せず合意形成にいたらない場合や、医療者の価値が強くなっているような場合など、様々な場面でジレンマを感じることも多いかと思います。そのような時、どうすればよいのか介入の糸口が見えず、自分たちには無理、介入できないと無力感や苦手意識が生じ、考えることを止めてしまいそうになることもあると思います。倫理的課題には唯一の正解があるわけではありません。答えのない倫理的課題にどのように関わっていったらよいのか思い悩むのが当然です。しかしその中で、何か一つの最善と思える決定をし、行動をしていかなくてはなりません。
 今回のシンポジウムでは、卓越したがん看護を実践するがん看護専門看護師(CNS)の倫理調整の実践事例を提示していただきます。提示される事例は、CNSが介入する特殊な事例ではなく、皆さんがよく遭遇するよくある事例です。このよくある事例に対して、CNSがどのようなに自身の価値観と対峙し、どのような倫理的調整を行っているのかが示されます。からみあっている事例をどのように紐解いていっているのか、どのような考え方をもって倫理調整を進めているのかが見えてくると思います。事例から皆さんが倫理的課題に介入していく糸口を見出すための参考になればと思っています。明日からの実践に生かす示唆を得る機会にしていただければと思っています。そして、自分たちには無理、介入できないといった無力感や苦手意識から解放され、少しでも気持ちが楽になって、皆さんのがん看護実践能力が高まることにお役に立てられればと思っています。