第34回日本がん看護学会学術集会

セッション情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション2
日常のケアに潜む倫理的問題への取り組み~様々ながん看護実践の立場から~

2020年2月23日(日) 13:55 〜 15:55 第1会場 (東京国際フォーラム ホールC)

座長:勝原 裕美子(オフィスKATSUHARA 代表),渡邉 直美(東京女子医科大学病院 がんセンターがん緩和ケア室)

 医療技術の発展に伴い治療の選択肢は増え、高度化・複雑化する中で、少子超高齢多死社会を向かえた日本では、病床の機能分化や地域包括支援システムの構築が進められています。人々のQOLも多様化する中、日本看護協会では、「いのち・暮らし・尊厳をまもり支える看護」を看護の将来ビジョンとして表明しています。また、厚生労働省では、病院だけではなく、在宅医療や介護現場も含めた医療・ケアの方針や生き方について繰り返し話し合うアドバンス・ケア・プランニングの重要性を盛り込んだ「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」への改訂がなされました。このような背景を受けて、多くの学会では本人の意向を尊重した意思決定支援の重要性に触れ、また、人としての尊厳が奪われることがないよう身体拘束をしない組織文化を目指して取り組みを始める施設が増え始めています。がん医療においては、低侵襲治療やがんゲノム医療、免疫チェックポイント阻害薬の誕生と適応拡大をはじめとする多様な治療選択、退院支援や緩和ケアへの移行、認知症高齢者への治療など、特定の場面やその意思決定に関する倫理的問題が注目される傾向にあります。しかし、がん看護実践の現場では、排泄や食事、あるいは転倒リスクの高い患者の見守りといった日常のケアの中にも倫理的問題が潜んでいます。看護師は様々な倫理的葛藤を抱えながら、それが何によるものなのか、どのように解決すべきものなのか、自分の疑問が正しいのか否か、善いケアとは何かと苦悩しながら日々の業務に押し流されている現状があります。一方で、このような日常のケアに潜む倫理的問題に気づかない看護師も少なくありません。患者や家族の思いや考え、希望を看護実践に反映していくために、倫理はその前提となるものです。したがって、看護技術のみならず、看護師個人の倫理観を高めていくことが求められますが、その看護師の倫理的感受性をどのように養っていくのかに悩む看護管理者もいます。そこで、本日は4人の先生にご登壇頂きます。看護師の倫理的視点を育んでいくための教育について、そして臨床で看護師の倫理的感受性をどのように養っていくのか、倫理コンサルテーションチームの立ち上げとその活動といった実践について、最後に管理者の立場からがん看護分野で今何が求められているのかについてお話しいただきます。会場の皆様と活発なディスカッションを通して、明日からの倫理的ながん看護実践に生かす示唆が得られる機会として有意義な時間をなることを願っております。