[2Bp] フレーバー物質，色素

[2Bp-09] 水晶振動子マイクロバランス(QCM)を用いたオレンジ果汁の香味発現評価とその代替素材としての乳化香料の活用

*田中 大河¹、上田 祐也¹、笹倉 寛生¹、酒井 貴博¹、丹沢 美結²、川村 出² (1. 長谷川香料（株）、2. 横国大・院・理)

キーワード：オレンジ果汁、水晶振動子マイクロバランス（QCM）、食品素材代替、乳化香料

【目的】
果汁に代表される食品素材は、不安定な社会情勢や気候変動により、価格高騰や調達不安のリスクが存在する。特にオレンジ果汁は近年の天候不順と病害による供給不足により安定供給が難しくなっている。これらのリスクを回避するために、清涼飲料水等のオレンジ果汁を配合する食品では、その配合量を抑えた商品設計が検討されるが、素材本来が持つ厚みのある風味が低減されることが課題となる。乳化香料は水溶性香料と比べて中後半に香味が持続する特徴を持ち、食品にコク味感や厚みを付与できることから、オレンジ果汁の代替素材としての活用が期待される。本研究では、各香料製剤が示す風味の発現やオレンジ果汁の飲料中における成分の状態を可視化することで、オレンジ果汁の代替素材としての乳化香料の優位性を評価した。
【方法】
果汁20%飲料(試料①)、果汁10%飲料(試料②)、果汁10%飲料に水溶性香料を0.1％賦香したもの（試料③）と乳化香料を0.1%賦香したもの(試料④)を調製した。専門パネルによる各試料の官能評価を実施し、各香料製剤の添加効果を確認した。QCMでは、疑似生体膜を固定化したセンサーを使用し、振動数変化から試料中成分の疑似生体膜への成分吸着量を算出した。また各試料を蛍光色素染色し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて飲料の状態比較を行った。
【結果】
官能評価の結果、試料④は試料①に近い香味になることが示された。QCMによる疑似生体膜への成分吸着量を比較した結果、試料④は試料①に近い成分吸着量を示し、乳化香料が果汁飲料中で疑似生体膜に吸着する性質を持つことが示唆された。共焦点レーザー顕微鏡にて観察した結果、試料④は試料①に近い状態であった。これらの結果から、果汁飲料に存在する乳化香料は口腔内の表面に吸着することで果汁由来のコク味感や厚みの付与に寄与し、代替素材として活用できる可能性が示唆された。