日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[2Dp] 食品分析

2024年8月30日(金) 15:00 〜 18:00 D会場 (3F N324)

座長:前田 竜郎(帝京平成大学)、飯島 陽子(工学院大学)、加藤 悦子(東洋大学)

17:15 〜 17:30

[2Dp-10] 果糖の酵素法による新規比色測定キットの開発

*天野 千尋1、日下部 均1 (1. (株)エンザイム・センサ)

キーワード:果糖、測定キット、酵素法、比色定量

【目的】果糖は,果実や蜂蜜などの食品に含まれる単糖であり,異性化糖や転化糖液としても多くの加工食品に使用されている.一方で,果糖の過剰摂取は肥満や脂肪肝などの健康上の問題を引き起こす可能性があり,食品中の果糖濃度を測定する意義は大きい.しかし,果糖の測定はHPLCや専門的測定キットなどを使って,専ら技術者が行っているのが現状である.当社既存の果糖測定キットでは,試料中の果糖をイソメラーゼ処理した後の総グルコースから,元々試料に存在するグルコースを差し引くことで濃度を算出している.さらに,60℃での反応工程が必要なため,食品を扱う現場での使用には困難を伴う.そこで,複雑な操作や加温を必要としない,簡便な果糖の比色測定キットを開発することとした.
【方法】(1)果糖測定キットの開発:2段階の反応により,試料中の果糖と等モルの色素を生成し,定量する方法を検討した.まずA液により試料中のグルコース及び呈色反応を阻害するアスコルビン酸を除去した.次にB液中のグルコースイソメラーゼにより果糖をグルコースに異性化し,グルコースオキシダーゼ,ペルオキシダーゼ,カプラー化合物及びトリンダー試薬により果糖濃度依存的な発色反応を誘導した.これら全ての反応が室温で進行する条件を検討し,レート法による検量線を作成した.そして A液,B液及び標準液(果糖)で構成される簡易測定キットを開発した.
(2)性能評価:単糖類に対する基質特異性を検討した.さらに,実際の食品を試料として,新キットによる測定値を既存法の結果と比較した.
【結果】果糖濃度を室温で比色測定可能なキットの開発に成功した.測定可能範囲は50~500 mg/Lであり,吸光度と果糖濃度に良好な直線関係が得られた.果糖以外にマンノース,ガラクトースに弱い反応を示した.既存法による測定結果と高い相関が認められ,新規比色測定キットの信頼性が確認された.