日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

C 農畜水産物とその加工品 (Agricultural product, Livestock product, Seafood, and their processed products)

[2Ip] 水産物、フードシステム、6次産業化、その他の食品

2024年8月30日(金) 15:00 〜 17:45 I会場 (3F N302)

座長:榎本 俊樹(北陸学院大学)、今泉 鉄平(岐阜大学)、古田 歩(県立広島大学)

16:30 〜 16:45

[2Ip-06] 加圧処理による食用コオロギの遊離アミノ酸の増大

*西 紗弥加1、岩橋 均1、西津 貴久1,2、今泉 鉄平1,2 (1. 岐阜大・応生、2. 岐阜大・先制食)

キーワード:食用昆虫、加圧処理、アミノ酸、代替タンパク質

[背景・目的]世界の人口増加および限られた食料供給により,代替食料源として昆虫が注目されている.しかしながら,昆虫は見た目や味において独特な嗜好性を持ち,多くの消費者に受け入れられているという状況にはない.そのため,食品加工技術の適用による品質操作や,それによる新たな用途の開拓が求められている.ここで,静水圧による加圧処理には,微生物の繁殖抑制あるいは殺菌しながら食品の改質が可能であり,食品製造現場への普及も進められている.一方,食用昆虫への適用においては十分な検討がなされていない.本研究では,コオロギに対して静水圧による加圧処理を行うことで内在酵素の作用によるタンパク質分解が起こることを想定し,遊離アミノ酸量へ及ぼす影響を明らかとすることを目的とした.[方法]供試材料として冷凍のヨーロッパイエコオロギを入手し,実験まで-80℃のフリーザ内で保存した.冷凍コオロギはミルミキサーを用いて粉砕し,約10 gを真空パック包装した.これを加圧装置(まるごとエキス,東洋高圧)内に静置し,温度制御しつつ,100 MPaおよび50 MPaの条件で1~4日間加圧処理をした.無処理および加圧処理後の試料を遠沈管に移し,遠心分離後の上清をアミノ酸分析に用いた.遊離アミノ酸含量はプレカラム誘導体化法により,HPLCを用いて測定した.[結果]加圧処理により,試料の流動性が増し,組織の溶解が進んだことを目視により確認した.HPLC分析の結果より,遊離のアスパラギン酸やグルタミン酸といった旨味に寄与するアミノ酸が顕著に増加することが明らかとなった.この他にも,ロイシンやイソロイシン,バリンといった分岐鎖アミノ酸の増加も確認された.ただし,2日間の加圧で増加が顕著であったが,それ以降では増加が穏やかとなった.また,50 MPaでの加圧による効果に関しても概ね同様の結果が得られた.